トップへ

スイッチングによるマルチカム収録について
 2CAM、3CAMというと、キャメラの台数だけが複数あること、あるいはVTRがそれぞれのキャメラに付いている状態を想像されることが一般的です。たしかに2キャメラ2VTR(アイソレーション収録)という状態も2CAM収録として度々使用します。しかし後から編集する2キャメラ2VTRでは状況が常に変化する生の被写体では連携して動くことが出来ずに、うまくカットを割ることが出来ません。またライブ中継も不可能です。
 そういった場合に使用するシステムがスイッチング方式です。しかし単に複数のキャメラから送られてくる映像をを切り替えるだけで次のような状態になってしまいます。
キャメラマンの画像2キャメ
キャメラマンの画像1キャメ
女の子と男の子の画像
女の子のアップ画像
ツーショット画像
←各キャメラが撮影する画像→
スイッチャーはCAM-1を選択
女の子のアップ画像
女の子のアップ画像
ツーショット画像
スイッチャーはCAM-2を選択
女の子のアップ画像
ツーショット画像 女の子のアップ画像
 一見うまくいっているようにも見えますが、実際の撮影現場はそんなに甘いものではありません。次のカットを撮らなくてはならないCAM-1からはCAM-2が何を撮っているのかわらないためにスイッチャーからの指示待ち状態になります。スイッチャーもキャメラ側からの情報が無ければ指示を出せずにタイミングは遅れてしまい、この状態は撮影終了まで続きます。また指示にはトランシーバーなどの不便な道具を使用するため、スイッチャーがやたら大声を出すこととなり、現場の雰囲気は悪くなるばかりです。結果は選択中のキャメラが動いてしまう見苦しいものになってしまいます。編集はパラ回し(アイソレーション)のVTRで救えたとしても、中継映像のミスは絶対に誤魔化せません。

 この問題を解決するものが普段私たちが使用するEFPシステムです。(EFPとはElectronic Field Productionの略です)

EFP三種の神器
1、TALLY  2、RETURN 3、インカム

※このシステムを構築するにはCCU(CameraControlUnit)が必要です。
実際には次のようになります
2キャメのタリー消灯画像
1キャメのタリー点灯画像
ツーショットタリー点灯画像 ツーショットタリー消灯画像
←各キャメラが撮影する画像→
 スイッチャーが選んだCAM-1のファインダーにTALLYランプが点灯します。
(ONTALLY)
1キャメのタリー点灯画像
2キャメのタリー消灯画像
ツーショットタリー点灯画像
 OFFTALLYのCAM-2はリターンボタンを押すことによりファインダーの画像がリターンビデオに切り替わり、現在選択中の映像を見ることが出来ます。CAM-2のキャメラマンは瞬時に必要と思う映像を狙います。
※リターンビデオ=スイッチャーからキャメラに返す映像。通常は選択中のプログラム映像やオンエア影像を返しますが、リターン2として裏スイッチングやエフェクトなどを返すこともあります。裏スイッチングを行う場合はグリーンTALLYが点灯します。
(裏スイッチング:本線とは別系統の送出など、スイッチャーが複数になること)
ツーショットタリー点灯画像 女の子アップ画像
女の子タリー点灯アップ画像
男の子アップ画像
←←
 同様にTALLYの消えたCAM-1はリターン映像を確認し、次に必要と考えられる画像を狙うことが出来ます。
男の子タリー点灯アップ画像
ツーショットタリー点灯画像
→→
 キャメラマン、スイッチャーの息が合い、次々にリズミカルなキャメラワーク、スイッチングが可能になります。TALLY、リターンビデオを用いることでインカムも静かになり、スイッチャーはタイミングに専念することが出来、作品のグレードは高くなります。
1キャメのタリー消灯画像 2キャメのタリー点灯画像
ツーショットタリー点灯画像
 キャメラマンが変化する状況に機敏に対応しながら撮影を進めることが出来、たとえスイッチャー卓が中継車等の離れた場所であっても何ら問題はありません。またキャメラマンにとっても言われるがままでないため、仕事に対する責任とやり甲斐を持つことが出来ます。

※キャメラの呼び方は「1、2、3、4・・・」が標準的ですが、馬場町角の某国営局では、最初の3台を「A、B、C」後を「4、5・・・」という形式が好まれています。これは1と2、3と4を確実に区別できるという利点があります。キャメラマンは出向いた会社のスタイルにスイッチャブルに対応しなければなりません。

現在千里ビデオサービスが使用しているスイッチング収録システムをご紹介します
4CAMキャリングシステム
4CAMシステムに対応したキャリーシステム(写真は3CAMで運用中)
左側はSW架、右側がVE架です。VTRはDVCAMを使用しています。
下の写真はVE架のオペレーショントレー。引き出し式のトレーにCCUのリモートがキャメラの順で並んでいます。VEが収録中のアイリス(絞り)調整を行い、キャメラマンは常に撮影に専念することが出来ます。もちろんスイッチャーも適正な明るさ、色合いの画像が送られてくるため、常にタイミングに専念できます。
キャリング式VE架

 ここで紹介したシステムが中継録画の基本になりますが、フレームインやフレームアウト、オーバーラップ時のフォーカスアウトなど、高度なキャメラワークを行うための必須の条件ともいえます。実際の現場ではキャメラが4台、5台と多くなりますが、考え方はこのシステムが基本です。
 千里ビデオサービスでは笹邊の長年の経験を生かし1987年の設立時から今日に至るまで、マルチキャメラによるスイッチング収録には上で紹介したEFPスタイルを採用しています。ライブ収録〜中継までお気軽にお問い合わせ下さい。(制作会社様向けの価格表をこちらに掲載しています