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技を支えるツールを折に触れて紹介します
(Fluid Zoom Drive)
ビデオ撮影はフィルム(CMやドラマも)と違いズームワークを多用します。映画ではズーミングは殆ど使われませんが、VPなどでは人物や商品へのズームインという演出が多く、おそらくこれは完成メディアがVHSであるということに起因するのでしょう(解像度が低く広めの画角では表情まで描写出来なかったからだと思います)また「予算面でトラックインの替わりにズームインで済ます」というのも原因かもしれません。写真は千里が愛用しているドイツ製のオイルダンプズームレバー
Fluid Zoom Driveです。
オイルダンプズーマー
装着状態
J15a-8に取り付けた状態ですが、ギアが1つ挿入されているためレバーの方向がレンズのズームを操作する方向と同じになり、手前のダイヤルを回転することでズームの速度を可変出来ます。しかしあくまでもこのツールは補助的なもので、レンズのズームリングが滑らかに動くように調整されていなくてはなりません。
※関東では電気(ズームサーボ)を使うカメラマンが多く、サーボレバーに補助金具を付け使い易く工夫されているのを見かけますが、ここ大阪では電気を使わないのが一般的です
(箱型レンズは押し引きが標準でしたが、最近ではリニアモーターが搭載され、電動ズーム&電動フォーカスが主流になってきました。実際押し引きよりも速くスムーズなズームインが可能です)
で、カメラマンの腕の見せ所!
クライアント、照明さんが見守る中、難しいカメラワークをディレクターに求められたときがその時です。注目される中、テーク・ワンでOKが撮れると最高。キャストNGは仕方ないにしても、カメラNGでリテークはやりたくありませんね。
(といいつつも現場でダンパーを使うことはごく希で普段は手動のみで決めています)
このレバーの現地価格は本体(長短スティック2本付き)672EUROでマットボックスのレールに取り付け出来るようになっています。私が重宝しているレンズへの直付け台座(Canon/J13a、J14a、J15a用)は現在見あたらず価格は不明。
ズーマーの部分アップ

75mm波形モニター
75mm波形モニター ENG(ElectronicNewsGathering)
と異なり
EFP(ElectronicFildProduction)では信号の管理が非常に重要です。つまりテレビジョンで表現できる白レベルと黒レベルには制限があり
(フィルムの半分以下の帯域)、その中でいかに階調豊かに美しく記録するかが問われるのです。編集で調整も可能ですが、入り口ではみ出した部分は救いようがありません。
そのためにVP収録では正しく調整された画像モニター(マスモニ)と波形モニターが必要になります。
波形モニター2H表示画面
1カメラEFPではリーダー電子の波形モニター5864を使用しています。CRTのサイズが75mmと小型でNP1バッテリーでも2時間ほど連続動作可能です。精度は5吋のものと変わることなく、現場では重宝というより必需品になっています。

波形モニター単体の場合ホワイトバランスやブラックバランスはキャリアの量で確認します。スキャン方向は「左から右」と「上から下」の2通りで状況に応じて切り替えます。さらに波形モニターにはAGC回路が付いていませんから、中継などの減衰状態の管理にも使用します。

フィルムと異なりビデオはラチチュードが狭く、表現できる明暗比は1:30程度ですから暗部から明部までの信号をこの範囲内に入れなければなりません。
例えば窓際の人物の表情を表現しつつ、窓の外が真っ白に飛ばないようにする場合は窓外に黒紗をかけたり人物に補助光をあてたりします。こういった場合も映像モニターだけではなく波形モニターを見ると状態は一目瞭然です。最近は照明さんからも「波形を用意してほしい」という要望があり、状況によってはスタジオで使用している5吋を持ち出すこともあります。

「シネガンマ」搭載のカメラの場合フィルム並みのラチチュードで表現出来るのですが、最終メディアがブラウン管や液晶になるため、出口から帯域を制限され、やはり正確なレベル管理が必要です。千里ビデオでは普段のロケ用に5864単体波形モニター1台とマルチカメラEFP用にベクトルスコープ、波形モニターを合体したを5854+5864Aを2セットを保有しています。また精密なレベル管理が必要なEFPロケ用に5吋5850V/5860Vを保有し、スタジオでは5850A/5860Aを使用しています。
残念ながら小型ベクトルスコープ5854はリーダー電子の製品カタログから姿を消し今は5吋のみになってしまいました。
(5864Aは現行機種です)

波形モニター2V表示画面
75mm波形&ベクトルスコープ

SSG(同期信号発生器)
リーダー410c全面 マルチVTRで収録する場合はVTRそれぞれのタイムコードを揃えなければなりません。短時間の収録であれば放送用カメラの場合タイムコードのずれは殆ど生じません。しかし収録が長時間になるとカメラの持つクロックの僅かな違いからずれが生じます。この問題を解決するのがSSG(同期信号発生器)です。放送基準のブラックバースト信号によってカメラを同期させることで全てのカメラのフレームとタイムコードが一致します。千里ビデオサービスが使用しているSSGは各種の標準信号も発生できるためVTRの解像度テスト用のマルチバースト信号や大型プロジェクターの調整に欠かせないクロスハッチなども出力することが出来ます。
(SSGはスタジオ用、ロケ用を保有)
リーダー410c背面

マルチケーブル
収録現場や中継現場ではマルチケーブルをよく使います。
映像の収録に音声は欠かすことが出来ません。そしてそれはマイク1本で録れるものではなく、またPA系から供給してもらうライン系だけでも不可能です。PAから2〜4系統、さらにAIR系を加えると小規模な収録でも6CHは埋まってしまいます。時に中継でV出しが有る場合には音響さんと双方向に音声の受け渡しを行います。こういったとときに役立つものがこのマルチケーブルです。
マルチケーブル&ボックス
マルチコネクター
マルチボックスと多芯のマルチケーブルは左のようなコネクターでジョイントします。8CHマルチの場合はケーブルも非常に軽くてしなやかなため60mの距離でも1人で簡単に架設可能です。もしこの距離をキャノンケーブルで張るとかなり大変な作業になってしまいます。業界では仕込みの速さ、撤収の速さも技術力として評価されます。マルチには8CHの他、4CH、16CH、24CH、32CHなどが有りますが、映像技術会社の場合は8CH程度が利用頻度も多く、取りまわしもよいと考えます。
マルチボックスのキャノン端子部分 マルチボックスにはオス、メスのキャノンが各CH毎に並列配置されていて、現場状況に柔軟な対応が可能です。マルチボックスは弊社が所有するボックス形式だけではなく、ボックスを無くした先バラ型のものも有ります。また両端に複数のキャノンを付けた2CH〜4CHマルチなどは自作することで対応します。4CHのマルチはENGミキサーとマイク間、2CHマルチはENGカメラとミキサーの間を繋ぐ場合に重宝します。
ボックス直結の状態
左の写真はちょっと変わった使い方ですが、マルチボックス2つを直結することでオスーオス、メスーメスの変換コネクターとして使うことが出来ます。また1入力3分配×CH数のパラボックスとしても利用できます。
アイデア次第で様々な利用方法があるマルチケーブル&マルチボックスはその名のとおり?マルチに役立つプロツールと言えるでしょう。

ジッツォ三脚用100mmボールレベル(正式名称不明)
100mmボールレベル GITZOはフランスの三脚メーカーとして写真の世界では超定番です。
左は#415という4段三脚で140cmから10cmのローアングルまで対応できるものです。今回ここに取り上げたのは三脚ではなく、上部に取り付けたアルミ無垢材から削りだした100mmの碗です。以前NHKが海外ロケ用に特注した時のロットに便乗して1つ入手したものですが正式な名称はわかりません。金額は1万円くらいの物ですが、たしかに海外ロケでは重宝しました。
140cmですから標準的な撮影には十分な高さですし、10cmのローアングルはハイハットを必要としません。開脚角度も3段階で40〜50cmという高さでもベビーの必要もありません。使用できるヘッドはビンテン、ハトラー、ミラー他100mmボールレベルであれば全て取り付け可能です。難をいえば高さ調整に若干時間がかかることです。何かと便利で普段は多機能ベビー三脚として撮影車に常駐しています。
目立つ道具ではありませんが、色んな撮影でとても役立ってくれとても便利なProToolとしてこのページに加えてみました。
ジッツォも最近はビデオ用三脚にも進出し、優れた製品を出しています。しかしよく見るとマンフロットやビンテンと同じものがジッツォブランドでも出ています。EUの時代ですね。
ジッツォのローアングル状態

たかがドライバー、されどドライバー(Vinten用ネジ回し)
コインドライバー
ごく普通のドライバーです。名称はコインドライバー。つまりコインで回すようになっているネジを回すために先が500円硬貨と同じ円周になっています。
業務用ビデオカメラの三脚用のクイックリリースプレート(普通フネと称される物)には三脚のヘッドに取り付けるためのプレート(ヘソ)を取り付けます。千里ビデオサービスでは普段ソニーのカメラもしくはソニーのフネが使えるようになったIKEGAMIやPANASONICのカメラを使用しているので脱着は不要ですが、時にビンテン以外の三脚や旧池上やPANASONICのカメラを使用する場合は500円硬貨を使って締め付けたり緩めたりします。
ところが、ビンテンのプレートは構造上500円硬貨ではプレートと干渉してしまい、うまくネジを締め付けることが出来ません。仕方なく100円硬貨を使うことになりますが、径が小さいため大きな力が必要になりとても苦労します。そこでコインドライバーの先をグラインダーで少し削ってビンテン用に加工しました。加工は滑らかな曲線を描くようにし、耐水ペーパーで研磨してあります。ついでに柄の部分に穿孔してストラップを通しています。美しさもいい道具の条件です。
たかがドライバーですが、こうすることによって撮影機材として「カメラマンの7つ道具」に仲間入りです。もちろんビンテンだけではなく、サクラーやマンフロット、ミラーにも使用できます。購入は東急ハンズのドライバーコーナーです。
ビンテンのヘソを取り付けている写真

モニターヘッドフォン SONY MDR-7506
MDR-7506の全体写真 特にProToolというわけではありませんが、ENGやEFPで音声を扱うには水準以上のモニターヘッドフォンは必須のアイテムです。基本的には密閉型で特性がフラットで過渡特性が優れ許容入力が大きく、そして装着感が良いこと。こうなると否応なしに機種は限られてきます。音楽スタジオではMDR-CD900STやZ900あたりがリファレンスになっていますが、千里ビデオのリファレンスはMDR-7506というSONYの米国モデルです。日本のスタジオでは900STの方が分解能で若干7506より評価は高いのですが、米国では7506の方が良い評価を得ているようです。
7506がCD900STよりも映像向けかというと
1:7506は
折り畳み可能:900STは折り畳み不可)
2:7506は
カールコード:900STはストレート)
3:折り畳めて
コンパクト:Z900より一回り小さい)
MDR-7506の折り畳み時の写真
携行には折り畳み出来る7506はとても便利です。音声さんにはMDR-Z900がカールコード付きで折り畳めて人気があるようですが7506より少し大きくなります。
MDR-7506のサービスマニュアル
民生モデルはSONYロゴですが業務用はSTUDIO MONITORの刻印です。ちょっとカッコイイかも。
笹邊が使っている7506は1台目が2002年5月のハワイロケの際に現地購入しましたが、現在では国内でも販売されていて、2台目は最近ヨドバシ梅田で購入しました。しかし
最も大事なことは自分のヘッドフォンの特性を理解し、SP再生した場合の結果をイメージ出来ることです。フィールド録音においてヘッドフォンはリファレンスとして携行するモニターなのです。
米国の業務用モデルらしく本体にサービスマニュアルが附属しています。国土が広くサービスが近くにないことを考慮し、壊れた場合は部品番号で発注しなさいということでしょうか。さすが大国アメリカだと思いますが、これは日本でも実施してもらいたいと思います。いちいちソニーサービスに部品表をFAXしてもらってやりとりしたり、難波まで走るのも厄介です。こういった小物についてはパーツの郵送なども考えて欲しいですねソニーさん。

インカム(INTERCOM)INTERCAM、INCOMとも。TBS等ではINTERCAMです。
番組やイベントでスタッフが着けているヘッドセット。有名なものにクリアカムが有りますが映像関係ではアシダ音響のインカムが一般的です。最近ではワイヤレスインカム(無線インカム)なども良く使われていますが、マルチカメラでの収録や中継ではカメラに装着するだけですぐに使える有線タイプが圧倒的に便利です。左の写真は最もオーソドックスなヘッドセット。この他軽量型のヘッドセット(2枚目の写真)が有りますが、現場では殆どのカメラマンはヘッドセットとしては装着せず首に掛けています。そういった状況を考慮してマイクを高感度化した首掛け専用(3枚目の写真)もあります。ただ首掛け専用はカメラマンよりはスイッチャー、ディレクターが使用します。
インカムで重要なことは長時間の装着に疲労感が無いことですが、その点では首掛け式がいいと思います。この他、周りの騒音がインカム内に入らないようにトグルスイッチが着けられています。カメラマンは話す必要が有るときのみスイッチを入れます。マイクがカット出来なければ大音響のライブではインカムは飽和し使い物になりません。
ヘッドセット(密閉型)
軽量ヘッドセット(首掛け兼用)
トグルスイッチは右の写真のようにケーブルの途中に有り、カメラマンが操作し易い場所(例えば胸元等)にクリップで止めます。
首掛け専用インカム
右のケーブルこそインカムシステムで最も便利なケーブルです。収録している音声(話や台詞)や制作系の指示をインカム系に送ることでカメラマンはより的確な判断が出来ます。
(SVSオリジナル)

逆算式無音タイマー??
昔から使用しているバイブレーター式タイマーです。メーカーはNationalですから、その古さはお解りいただけると思います。撮影現場ではテープ残量や、様々な予定時間があります。しかし普通のタイマーでは音が出てしまいます。時に携帯電話のアラームも使用しますが、ブーブーというバイブレーターは以外と大きな音として録音されます。左のタイマーは単5電池で動くもので、モーターの回転速度が低く、振動だけが体に伝わります。またインカムのケーブルや腰ベルトに装着できるようにクルップが付いています。東急ハンズで購入しましたが、未だこのタイマーに勝るものには出会っていません。START/STOPスイッチはスライド式のため、ポケットに入れていて不意に切れたりしません。
サイズは3cm×4cmです。