小型ハイビジョンキャメラによるステディーショット(スタビライズショット)を実現するために千里ビデオサービスではグライドカム4000 PRO(Glidecam)を導入致しました。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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グライドカム4000 PROは本体とそれを支えるスムースシューターによって構成されています。グライドカムの開発者であるMetaphoric
Picturesのプロデューサー兼ディレクターのMartin Stevens氏が「私は、自分の批判的で細かいことを気にしすぎる性格のために苦労をしている」というように、きちんと作動しないものは好みではないということから、これまでの防振装置の問題に悩み、その結果自らグライドカムを発明したそうです。 ※カノープス社の海外での導入事例を参照してください。 笹邊も氏と同様に他の防振装置では色々悩み、その結果このグライドカムを選択しました。千里ビデオサービスがグライドカムを導入するに当たり、事前に数社の製品と比較しました。その結果ジンバルの精度やアームの動きが最も優れていたものがグライドカム4000 PRO+スムースシューターでした。 |
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←これがグライドカム4000 PROの心臓部ともいえるジンバルベアリングです。レコードプレーヤーのトーンアームの支持部のマイクロピポットのような滑らかな動きをする回転部はシールドベアリング構造のようで、無調整になっています。
※ジンバルとは羅針盤を吊っておく機構。船が揺れても羅針盤は水平を保って揺れないようにするもです。構造は三軸ジャイロの支持部と同様です。 |
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4000 PRO+スムースシューターは小型キャメラの特徴であるオンボード型の液晶モニターを使用するため、本体にはモニターなどは付けません。千里ビデオサービスでは4000
PRO+スムースシューターをHVR-Z1Jに特化させることで、スピーディーなセットアップを実現しています。また、高性能ワイドコンバーターを装着した状態で安定するようにバランスウエイトを設定しました。またHVR-Z1Jには放送キャメラと互換の舟(クイックリリースプレート)を使用することで、ハンディーや三脚使用への変更も敏速に対応することが可能です。 この4000 PRO+スムースシューターの導入テストには輸入代理店の駒村商会及び販売会社のシステムファイブに協力していただきました。また、装着時の写真は照明技師の鎌田さんにモデルをしていただきました。 |
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移動ショットでのキャメラの上下動を完全に抑えるサポートアームは極めて高い精度で作られています。キャメラの重量を完璧に打ち消すカウンターフォースの調整はビンテンの三脚と同様にコイルスプリングが使用され、2箇所のボルトにより無段階の調整が行えます。これにより、キャメラマンが歩いても、また駆け足で走った場合も、キャメラはレールドリーの上を移動するような動きが可能です。またレールの架設が不可能な階段や不整地であっても効果は同様です。 下部に付けられたバランスウエイトはキャメラマンが片手で調整することが可能で、テープの残量変化によるバランス変更も容易に行えます。 |
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サポートアームのスプリング調整部は六角レンチで調整します。スプリングは上下で2本あり、それぞれを調整します。搭載するキャメラをHVR-Z1Jに限定することと、4000
PRO+スムースシューターを自社保有することで、レンタル機材で生じるセッティング時間が大幅に短縮出来ます。
HVR-Z1Jに大口径ワイドコンバーター、クイックリリースプレートを使用した場合、スプリングの目盛りは3〜4の間がバランス位置になりました。搭載キャメラの大きさにはまだまだ余裕があると思われます。 |
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今回グライドカム4000 PRO+スムースシューター導入の評価は病院の新システム紹介VPのためのロケハン及びリハーサルという恵まれた状況で行うことが出来ました。使用時間は午前中に3時間、午後に2時間余りの合計5時間に及びました。そしてエキストラや出演者に実際に動いていただき、広角での追いかけショットや、望遠でのフォローショット、車椅子を使用したトラックイン、トラックアウトショット、そして階段の駆け上がり等を行いました。収録した映像を監督とともに評価した結果はHDVハイビジョンキャメラのキャメラワーク増強には不可欠の特機であるということです。そしてキャメラマンからの評価として5時間のキャメラワークにもかかわらず肉体的な疲労はほとんど無く、特別な筋肉トレーニングも必用としないグライドカムはたいへんフレンドリーな装置であるということです。 グライドカム+スムースシューターはHDVの小型高性能な機能にステディーショットという強大な戦闘能力を付加するものになります。今回の4000 PRO+スムースシューター導入は千里ビデオサービスが提唱する「HDVキャメラを使ったお手軽特機撮影」の一環であり、今後も様々な特機利用の撮影スタイルを充実させてゆきます。 |
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グライドカムを使用した移動ショットのポイント
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グライドカム等のスタビライザーを初めて使用した人が移動ショットを撮ると、どうしてもワイド中心の「いかにも移動ショット」というものを狙いがちです。しかし実際に必要なものはそういう安易な移動ショットだけではなく、被写体をアップで捉えたり、タイトなサイズでフォローした映像です。またズームワークやパンワークも重要です。そして何よりも安定したフィックスを撮れなくてはなりません。こういう効果的なキャメラワークを学ぶには現在CSで放送されているER等の映画は大変参考になります。すこしグライドカムでトレーニングすれば、フィルムキャメラやシネアルタ、バリカム等の専門オペレーターのような高度な技術や強靱な肉体を持ち合わせていない我々一般キャメラマンでも、階段を駆け上がると「まるでクレーンショットのような映像」が撮影出来るようになります。また「どうやってこんな所にレールを敷いたんだろう?」という撮影も不可能ではありません。グライドカムの醍醐味は「いかにもスタビライザー」ではなく「スタビライザーを感じさせない」撮像技術ではないかと思います。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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性能評価にご協力いただいた企業様
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グライドカム実践編
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デモテストで監督に気に入っていただいたグライドカムの本番の日です。階段や狭い通路、テレ側でのフィックスなど様々なシチュエーションでの練習を重ねてきた甲斐があって、本番はいたってスムーズにシュート出来ました。まさにスムースシューターです! 実はこの本番までにスムースシューター24時間チャレンジと題してデスクワークから車の運転中、食事中、そして睡眠中も肌身離さずというトレーニングを行いました。まさに体の一部と化したスムースシューターです。(もちろんベストだけです) |
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ベーターカムを他社スタビライザーに載せて撮影したときとは全く異なる軽快さで、思い通りの動きが出来ることで撮影がとても楽しくなります。何故もっと早く導入しなかったのだろうか?と少し後悔してしまいました。 小型キャメラが高性能化されたことは、これまでキャメラ優先に行っていた機材選定を根底から覆すことになりました。撮影シーンによってアイリスやパラメーターをVEがリモートコントロール出来る大型キャメラか、リモートは効かないけれども大型機に近い画質画質を持った小型機を選べる時代になりました。 |
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低いアングルはグライドカムにとっては苦手なシーンです。今回はまだ吊り下げキットを入手出来ていなかったために、車椅子に乗ることでアングルを下げました。 車椅子だけではなく、自動車などでも応用できるかも知れません。小型高性能なグライドカムを使った撮影は工夫次第で様々なシーンに応用できるでしょう。夢が膨らむグライドカムです。 ※オペ室や待合いの出演者は全てキャスト&エキストラさん達です。本当のオペ室へは今回のようなラフな格好では入れません。 この現場のムービーはインテルのサイトでご覧いただけます。 |
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グライドカムを快適に使う工夫
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1番目の工夫は液晶ディスプレイの遮光フードです。HVR-Z1Jには純正フードが無く、海外のサードパーティー製のものを選ぶことになります。しかし四方が遮光されたフードではグライドカムには適さず、下方が覆われていないものが最適です。そこで選んだフードはHVR-V1J用のソニー純正フードです。V1JとZ1Jではディスプレーサイズは同じですが、構造が異なるため、少し削る必用がありました。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
下方にフードがないことで水準器も取り付けることが出来ます。水準器はシンワ製のカギ尺用のものを取り付けました。 グライドカムの撮影では水平の保持が重要です。スムースシューターのおかげで歩行による画面の揺れは皆無になりますから、キャメラマンは画角と水平保持に集中することが出来ます。 |
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2つ目の工夫はLANCによるズーム、フォーカスのコントロールです。Z1Jを購入したときに見つけたWAKOというメーカーのリモコンをベルクロでグリップに固定し、指先の操作でズーム、フォーカス、REC、そしてビューファインダーのキャラクターON/OFFが可能になります。 スタビライザーを使った撮影ではシュート中にレンズやアイリスなど、キャメラのボディーには一切触れることが出来ません。このリモコンはケーブルが細いスパイラルになっていて、グライドカムのバランスにも全く影響しません。もちろんミキサーやディレクターモニターに接続する音声ケーブルや映像ケーブルも極細の物を選ぶ必要があります。 |
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これは工夫という訳ではありません。センチュリーのHD用0.7倍ワイドコンバーターです。当初純正の0.8倍を使用していましたが、ワイド端での湾曲や解像度の低下が気になり、監督と検討した結果センチュリーに決まりました。もちろんこのレンズもワイドコンバーター故に0.7倍では湾曲してしまいますが、0.8倍相当の画角での湾曲は皆無といえます。そしてどうしても引きが足りない場合は0.7倍の広角も有用です。このワイドコンバーターのレポートは専用角形フードとともにKeywordBlogで紹介しています。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
千里ビデオサービスはシステムファイブで購入しました