Field Report Archive
千里ビデオの代表が現場で印象に残ったことを写真やビデオキャプチャーで綴る写真日記
(webへの公開は制作会社、クライアント、出演者の許諾をいただいておりますが二次利用はご遠慮下さい)
レンズメンテナンス 11/08(Thu)

 愛用している放送用SDレンズのグリップカバーの塗装が剥げしまい、交換のために注文しておいた補修部品がミカミから届きました。光学系自体は普段からミカミでメンテナンスをお願いしているので、解像度も高く偏芯やガタツキもありません。またズームリングのトルクも十分で動きもスムーズなのですが、なにぶんにもバルセロナオリンピックの時に購入しただけあって、15年の歳月はグリップ部のプロテイン塗装を見るも無残な姿にしてしまっていました。

 早速レンズからグリップカバーを外して新しいカバーと並べてみました。やっぱり新しいものは見ていて気持ちいいものです。何故自分で交換しようと思ったかといえば、部品代よりも工賃の方が遥かに高く、光学系ではなくカバーくらいなら自分でも大丈夫と考えたからです。ちなみに部品代は1万と少し。

 さて、開けてビックリ玉手箱!
 けっこう色々なハーネスがつながっている上に、ズームレバーやスイッチ関係が色々付いています。作業自体は大変なことはありませんが、そろそろ老眼の域に入った笹邊の眼にはキツイところがあります。それでも約1時間ほどの作業で交換を終えることが出来ました。

 キャメラに取り付けてアイリス、ズーム、フランジバックを確認して作業完了です。あまりにも新品で、ちょっと恥ずかしいほどですが、先日の京都ロケでの恥ずかしさはそれ以上でした。来週はSDロケが続くのでこのレンズに頑張ってもらいます。眼鏡を使われる方はお解かりだと思いますが、古いレンズであっても光学製品は電子機器とは異なり、基本の光学設計が優れていればメンテナンス次第で長く使うことが出来ます。今の一眼デジカメの場合では現行レンズよりも銀塩時代のレンズの方が優れた光学性能を示すものがあります。例えばNikkor 21mm/F4というレンズは一眼レフ以前のNIKON Sシリーズ用を流用した広角レンズですが、ハッセルブラッドSWCのビオゴン38mm/F4.5と同様に、その後発売されたどのレトロフォーカスタイプの広角レンズよりも優れた解像度と描写性能を誇っています。またイーストマンコダックのKodak Commercial Ektar 10in F6.3なども名玉中の名玉だと思います。
 今回グリップを新調したCanon TV Zoom Lens J14×8.5はHDレンズと比較できるものでもありませんが、さすがに放送用レンズだけあって、現行の業務用YJシリーズと比較する限りは今尚圧倒的に高画質であることは確かです。それに地球温暖化防止を考えると、同じ機械製品を永く使うことは環境にも優しいと考えます。


 それにしてもこのグリップ、百戦錬磨の兵といった感じですね。しばらくは棚に飾っておきます。

 
北八ヶ岳へ 11/05(Mon)

 連休は北八ヶ岳へ行っておりました。半分仕事で、半分は青春を拾い集める山行の旅?でした。
 「青春を拾い集める」なんていうと誤解されそうなので、正しく言うと、笹邊が若かった頃に大変お世話になった山小屋が50周年を迎えたことのお祝いと、DVD制作の打合せです。場所は北八ヶ岳を横断する国道299号線に面したところで、無積雪期(5〜11月)には小屋まで車で行ける山小屋です。
麦草ヒュッテのホームページは標高2127mということで、URLもそうなっています。


 到着した日は月齢22.9で2000m以上の麦草峠は快晴。風も無くシンチレーションは皆無。星を見るには最高の天気でした。ただし気温は氷点下。デジカメ(サイバーショットR1)を東の空に向けて30秒ほど露光した星空です。オリオンがきれいに見えます。


 そして10月24日に大アウトバーストしたホームズ彗星(17P/Holmes)も肉眼で見ることが出来ました。国立天文台「10月24日〜25日には約3等級の明るさとなり、肉眼でも見えるようになりました。11月3日現在、拡散したもののまだ2等台の明るさを保っています。」と発表しています。下の写真は麦草ヒュッテ駐車場からサイバーショットで撮影したものです。中央の少し上に大きく光っているのがホームズ彗星(17P/Holmes)です。

 デジカメで撮れたから、これならビデオでも撮れるはず!とHVR-Z1Jでハイビジョン収録に挑戦しました。さすがにノーマルでは何も写りませんが、18dBにゲインアップし、CCD蓄積モードによって撮影に成功しました。Z1Jで撮影した動画(ダウンコンバート)をアップしています。意外と写るものです。


 星を楽しんだ翌日は仕事モードです。朝食前に霜の降りた草原や雑感の撮影です。写真だけではなく、勿論ハイビジョンでも撮影しています。


 煙突から白い煙が昇る麦草ヒュッテ、秋空がよく似合います。


 ヒュッテを出発し、高見石を目標にシラビソの森を行くハイキングコースをを登って行きます。コースは山小屋の人々の手によってよく整備されています。


 亜高山帯の樹木や地衣類を楽しみながらの山歩きは実に楽しいものです。風の音や鳥のさえずりなど、森の音も楽しみです。


 長く山歩きから離れた生活のため、疲れる前に一本立ててゆっくりゆっくりのペースです。きっちりと身支度した登山者から見れば「山を舐めている」ような笹邊の格好です。当然今回も登山靴ではなく、作業服屋で買った安全靴(1980円)と作業ズボン。でもこれが無積雪期の山には向いていると思います。これまで槍、穂高、大雪なども概ね安全靴かゴム長でした。ゴールデンウイークの南八ヶ岳も実は編み上げの安全靴でやってしまいました。「過剰な山道具は遭難のもと」が持論で、天候判断や体力判断など、山はすべて自己責任です。「山を舐める」とはまさに字のごとくで、山の土や岩の味、風の臭いを「舐めるほどに知る」ことが大切だと、一緒に行ったスタッフに屁理屈をこねています。
 一服の後は一気に高見石へ登って白駒池や展望の撮影です。この日は上空に雲も無く、風も穏やかでまさに撮影日和でした。


 今回使用した機材はキャメラはHVR-Z1J、ビンテンはビジョン3、そして三脚はビンテンではなくジッツォにボールアダプターを付けています。またシーンによってはセンチュリーのHDワイコンを使用しました。フィルターはND×1/4です。


 高見石小屋でナンカレーを戴いてから白駒池へ下ります。カレーの話のついでで申し訳ありませんが、高見石小屋のトイレは昔とは違って大変きれいになっています。使用料は¥50.-


 白駒池へ下りて「青苔荘」にお邪魔しました。小屋主の清さん夫婦がおられ「上がっていきませんか」に甘えてゆっくりさせていただきました。笹邊は23年前この小屋で一冬お世話になり無人撮影装置を使って動物や鳥の撮影を行いました。その頃の写真が今も小屋に飾ってあって、懐かしいというか、恥ずかしいというか・・・・。時間も忘れて昔話に花を咲かせて気が付くと夕暮れ。50周年記念のパーティーに遅れてはいけないので「青苔荘」を後にしました。
 今回のパーティーは麦草ヒュッテ50周年と親父さんの80歳誕生会を兼ねていて、総勢120名の大宴会となりました。現オーナーの正広さんが進行し、お孫さんから花束を贈られる親爺さんはととても嬉しそうです。
 宴会の後も遅くまで常連さんたちと話が弾みます。後片付けは従業員だけではなく、元小屋番のOBさんたちの手によよって手際よく進みます。上の写真は現オーナーの正広さんと笹邊。そして笹邊が載った山渓を見て驚く千里ビデオサービスのスタッフ。


 一夜明けた4日も気持ちのいい秋晴れでした。早速仕事モードで親爺さんやOBさんを取材します。制作期間1年半予定のDVD「北八ヶ岳」は昨日クランクインしました。


 色んな方と記念写真を撮ったあとはジープの写真も!
 このジープは常連のチュウさんの50系で23年間乗り続けておられます。「乗って下さいよ」のお言葉に甘えて早速299をドライブする笹邊。久々に握るパワーアシストの無いスパルタンなステアリングにワクワクしながら心は23年前にタイムスリップしています。


 この1枚は23年前の写真。常連の菊さんと当時のマドンナ、否、永遠のマドンナY.O.さん。そしてステアリングを握る笹邊。今回の山行で青春を拾い集めることが出来たでしょうか。


 
後宇多法皇御入山700年法会 10/24(Wed)

 京都市右京区にある真言宗大覚寺派の大本山・大覚寺(旧嵯峨御所)で、「後宇多法皇御入山七百年記念大法会」が営まれました。今回の撮影は現在進行中の映像作品の一部になります。記念大法会は26日までの3日間に渡って執り行われます。

 今日は見事な秋晴れでした。まさに撮影日和です。本番前に戴いた昼食は名物の山菜釜飯。約30分の時間をかけて焚いた釜飯はとても美味でした。

 法会の行列は先頭が金棒で始まります。お寺なのに何処と無く神社の神事と似ているのは、大覚寺が嵯峨離宮(嵯峨御所)であったためでしょうか。

 今回の撮影で必要なカットは約1分ですが、違和感の無い編集が行えるように様々なシーンを撮影します。

 オフィシャルVPのため、パスをいただいての撮影となり、自由なポジションにキャメラを置くことが出来ました。当然のことながら、オフィシャルと言えども一般参拝者の方には気を遣わなければなりません。

 撮影は屋外から室内に移り、ノーライトということで今回は高感度なIKEGAMIを使用しました。現在千里ビデオサービスではIKEGAMIの舟(三脚アタッチメント)をソニータイプに変更しているため、キャメラの脱着がスピーディーに行えます。現在では松下の舟もソニー互換の舟に変わり、とても便利になりました。

 最後にデジカメで勅使門を撮りました。菊の御紋と北斗七星が印象的です。今回の作品の本編は四国ロケになります。笹邊も久々の四国にワクワクしている今日この頃です。

 
HVR-Z1JでのVP撮影 10/23(Tue)

 東大阪にあるメーカーさんのVP撮影でした。朝8時集合の撮影は箕面出発07:00です。10月後半になってようやく早朝が肌寒い季節になりました。

 撮影キャメラはHVR-Z1Jです。対象が小物で三脚使用のためHDCAMよりも取り回しが楽です。

 ビンテンのビジョン3にマンフロット#505で使用していたLANCリモートを使用していますが、パン棒の取り付け部は全く同一です。現在#505はEOSの望遠レンズ用にスプリングを交換してほとんどスチル用に使用し、Z1Jにはもっぱらビンテンを使用しています。

 灯体からの光がレンズ表面に当たらないように、フードは最大に伸ばしています。いくらT*のカールツァイスといえども、強い光線が直接レンズに当たるとコントラストが低下してしまいます。


 明日は京都の大覚寺。IKEGAMI/DVCAMのSD収録です。この撮影は11月の徳島ロケに連動する撮影になります。本山での収録ということで以前撮影した世界遺産の東寺(教王護国寺)と同様にスーツ着用です。


 
琵琶湖周辺での環境保全映像の撮影 10/22(Mon)

 琵琶湖に注ぐ川で鮎の産卵を撮影してきました。その一部を掲載しますが、動画を含んでいるので下記のURLにてご覧下さい。千里ビデオサービスでは企業向け映像制作に限らず、環境保護目的の映像や、学術調査、教育機関向けの映像制作も行っています。
Field Report/鮎の産卵
http://svs.ne.jp/hibi/IMAGE/20071021/

 
ライブ中継終了 10/16(Tue)

 神戸で開催されたAPDW 2007(アジア太平洋消化器病週間)で実施されたエンドスコープ(内視鏡)デモンストレーションの中継は無事終了しました。北里大学東病院と神戸ポートピアホールを結ぶNTTの光ファイバーを使用したライブ中継です。

 中継回線は双方向2回線です。神奈川側は映像2CH/TX、1CH/RX、音声4CH/TX、4CH/RXで、神戸は映像1CH/TX、2CH/RX、音声4CH/TX、4CH/RXの複合回線となります。ポートピアホールのステージ正面に2画面が映し出されます。

 プロジェクターは12000ANSIが2台で、間にステージ及び神奈川へライブ映像を送るキャメラを配置します。キャメラマンは邑久が担当です。

 舞台袖のオペレーションブース。左はJCSさんで、右がSVSブースです。

 中継キャメラはDXC-637/CCU-M7、収録にはDVCAMを3台を使用しました。オープニングやインターバル、エンディングの送出はCANOPUSを搭載したいるものPCを使用し、ステージに配した2画面のコントロールは全チャンネルに10bitフレームシンクロナイザーを内蔵した愛用のAW-SW350を使用します。下手スクリーンはPGM OUTを、上手スクリーンにはPRV OUTを使用しています。

 本番はAM 8:30〜PM 3:30で、本番前日の15日に仕込&リハを行い、本番の入り時間が早いために昨日は神戸泊まりとなりました。緊張の現場に寝不足は大敵です。おかげさまで今日の現場は寝不足にもならず、気分の良い一日となりました。
 今月はこの後ハイビジョンのVP1本とSDのVPが2本、そして編集が数本と、かなりハードなスケジュールになりました。2007年も残すところ2ヶ月半です。千里ビデオサービスは2007年のラストスパートに突入です。

 
インカム製作 10/14(Sun)

 週明けの現場用にインカムヘッドセットを製作しました。久々の笹邊工作室の営業です。
 仕事は関東の病院からの複数同時手術と関西のホールを結ぶ公開手術です。千里ビデオは関西を受け持ち、2スクリーン、1キャメラ、1VTRの現場なので特に厄介なことはありませんが、FDさん用のインカムのオーダーが入りました。通常なら小屋のクリアカムを使用しますが、オーダーの規格がTX+4dB/RX+4dBで、小屋の回線とは独立したものということです。

 打ち合わせ時にほぼイメージは出来ていたので、今日はその製作作業を行いました。インカムはヘッドセットとマッチングBOX、コネクターで構成します。

 ヘッドセットはアシダ音響のMT-668Dという小型汎用タイプです。マイクロフォンはダイナミック型の平衡タイプ。

 これはオリジナルのマッチングBOXです。断線防止のため、内部はホルメットで入出力部を補強しています。

 端子部はキャノンがマイク用で、標準プラグがスピーカー用です。スタジオで運用テストも完了し、音質、レベル、そして使い勝手、デザイン満足できるものになりました。後はSVSステッカーを貼れば完成です。
 これまでにもレールドリーやアヘッドカムなど、必要なものは自社で製作するというのが千里ビデオ流のスタイルです。というか、職人気質の撮影技術会社ということでしょう。本番は週明けで、リハも含めて2日の現場です。

 
徳島ロケハン 10/11(Thu)

 笹邊が東京で仕事をしている間、別班が徳島のロケハンに行って来ました。仕事はお坊様に関わるVPで、この日は撮影場所の下見と打合せです。


 お堂の中では講習が行われています。VPはこういったお坊様向けのもので、照明部と特機を用います。撮影は今月末から来月はじめで、四国霊場 八十八箇所の一つをお借りして行います。


 
吉祥寺井の頭公園 10/09(Tue)

 4日間東京に行ってきました。ブログの方に東京からアップしていますが、東京は街中の緑が多い事に感心します。

 現場は「吉祥寺アニメワンダーランド」で、車は井の頭公園の中を走っています。武蔵野市民の人でもそう簡単には車では入ることの出来ない場所です。乗り入れは許可をもらった我々のハイエースと機材車の3tトラックです。

 イベントは10/6と10/7の2日間です。笹邊の仕事は現場の記録と夕方から始まる「森の映画館」でした。これは初日の氷上恭子さんたちの「シフォン風のステージ」。このほか大竹宏さんのステージや「メイシーちゃんショー」「ボノロンと遊ぼう」などが行われました。

 これが「森の映画館」の様子です。子供の頃小学校の校庭で行われた映画鑑賞を思い出します。

 2日目は神谷明さんを中心とした冴羽商事のメンバーによるコンサートは神谷明さん、古川貴子さん、トゥインクルズ、TOYBOX等、そして井上かおりさんのとても楽しいステージで始まり、橋本潮さん、さらに宮内タカユキさんの娘である宮内真友さんのステージ、最後はサックスアンサンブル「ビッグウエンズデー」がアニメソングの演奏などを披露して「森の映画館」の開演になりました。
 上の写真は2日目のエキストラカット。冴羽僚とファルコン(海坊主)、つまりシティーハンターの声優である神谷明さんと、舞台スタッフのKさんです。Kさんは大阪のコスプレーヤーとしてかなり有名な人?です。本人曰く「夢のツーショット」だそうです。

 そして最後の写真、これは笹邊の「夢の4ショット」です。左からゲゲゲの鬼太郎、笹邊、猫娘、そして鬼太郎の頭の上には目玉のおやじが乗っています。

 東京最終日、つまり井の頭公園の2日間の翌日は練馬駅前にある「大鳥神社」の「〜大鳥神社にぎわい・トライアングル・ぐる・グルめ〜練馬夕薬師」というイベントがあり、笹邊は記録担当でした。ステージではせんば太鼓武蔵大学のダンスサークルによるステージ、ゲゲゲの鬼太郎ショー、スタンプラリーなどが行われました。そして「あこがれのフォーショット」ゲットです。米子は鬼太郎の生まれた土地ですが、練馬は鬼太郎がテレビアニメとして育った土地なのです。
 仕事を全て完了し大阪には8日の深夜(9日)に無事帰阪しました。氷上恭子さんにもお会い出来、とても楽しい東京の仕事だったと思います。

 
袖振り合うも多生の縁 10/01(Mon)

 先日大阪市内の制作会社へ納品に行った時の話です。
 笹邊がその建物に入っている間、助手を残して車を離れました。駐禁ではないのですが、一階が個人住宅になっているため、必要な時に移動できるための配慮です。一度家の住人が窓から車を見て目が合ってしまったそうです。しばらくすると再び住人が、今度は窓を開けて声をかけてきました。エンジンも止めているので大丈夫だと思っていたのですが、『これは絶対文句を言われる』と助手の胸の内に反して「ここに車を停めてくれたんも何かの縁やし、これ食べて〜。美味しいねんよ」と山盛りの葡萄を窓から差し出して下さいました。


 車に戻って話を聞いて感心しました。
 こんなこともあるんですね。何やかやと、世知辛かったり、物騒だったりするこの頃ですが、聞いていて嬉しくなりました。頂いた葡萄はもちろん、スーパーで買ったものの何倍も美味しいものでした。
 タイトルに「袖振り合うも多生の縁」とかきましたが、これまで「袖触れ合うも多少の縁」と思っていた言葉は間違いだそうです。この記事を書くときに知りました。
 あるサイトでは「他生」を正しいとしています。
 
袖触れ合うも多少の縁」ではなく、「袖振り合うも他生の縁」である。現在生きているのは今生(こんじょう)で、「今生の別れ」などと使うが、「他生」は今生ではない、前世のことである。「こうして遭ったのも前世の因縁」だという意味である。これは仏教の輪廻転生思想によるものであり、仏教の因縁とは、原因があって結果という縁がある因果応報という思想である。
 
だそうです。
また別なサイトでは次のように「多生」を正しいとしています。
 
袖触れ合うも多少の縁。
道で人とすれ違い、袖が触れ合うようなことでも、それは多かれ少なかれ「縁」である。
人の「縁」は貴重なものであるから、出会いは大切にしなければならない。
……という解釈で納得している方、ご注意を。
これが「ことわざ」だと思ったら、大間違い。
その正体は、ことわざから生まれた「誤字等」です。
本当の意味を知らずに使っていると、大恥をかくかもしれませんよ。
「ことわざ」として使われる本来の言い回しは、「袖振り合うも多生の縁」です。
最大のポイントは、「多生」の部分。
このことわざの「本質」と言える言葉です。
それを知らずに「多少」と表記しているのは、ただの誤変換ではなく、言葉の取り違えと言えます。
「多生」とは仏教の言葉で、この世に何度も生まれ出ること。
生と死を繰り返す「輪廻転生」「生まれ変わり」の思想です。
 
道で人とすれ違い、袖が触れ合うようなことでも、それは何度も繰り返された過去の世の縁によるもの。
すべては理由のないただの「偶然」ではなく、縁によって定められた「必然」である。
仏教の基本理念である「因果応報」につながる考え方と言えます。

 
中略
 
ところで、このことわざに関しては、もうひとつ勘違いされている例があります。
それが、「多生」を「他生」と表記した「袖振り合うも他生の縁」です。
「多少」が間違いであることを知っていても、この「他生」が正解だと思っている人は非常に多いです。
Googleでの検索結果を見ても、「多少」にバツを付けて「他生」をマルにしている解説のなんと多いことか。
 
他生の縁:73,400件
多生の縁:52,700件
多少の縁:20,700件
 
「他生」でも完全に「間違い」と言い切れるわけではないのですが、「他生」と「多生」には明確な違いがあります。
それを知らずに「他生」を正解と信じる人々の知識は、いかにも「中途半端」と言わざるを得ません。
「他生」もまた仏教の言葉で、「今生 (こんじょう)」に対する「前世」と「来世」を示します。
ことわざとしての解釈は「多生の縁」とほぼ同じですが、この場合は「前世」のみに限定する必要があります。
「来世の縁」では因果律が崩れてしまいますので、「因果応報」につながりません。
意味がまるっきり変わるわけではありませんので、「他生」を「正解扱い」することも可能でしょう。
しかし、他人の「多少」を訂正するなら、本当は「多生」であることを知っておきたいものです。

 
葡萄を頂いたおかげで一つ賢くなれました。これが「袖振り合うも多生の縁」というものでしょうか。それとも「ネットで検索も多少の縁」?否、「多生」の縁かも。

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