2006年01月05日(木)
エッジクロップ

エッジクロップがキーワードだった。
 現在日本のテレビ放送では640×480のSDと1920×1080のHDが利用されている。SDは地上波アナログやCS、BSで利用されている4:3比率の画面だ。(従来方式の画面に左右圧縮して記録したスクイーズワイドもSDになる)そして地上波デジタルやBSHiで放送されているHDは16:9比率のハイビジョンだ。そしてBSHiの場合は地上波と同時放送または再放送を行う場合、映画放送のように上下に黒い部分があるレターボックス方式でダウンコンバートして放送している。この場合は作画時のフレームが全て放送されるが、4:3モニターの場合は上下に黒い部分が出てしまうし、16:9ワイドモニターで全画面表示すると拡大による画質劣化が生じてしまう。
 一方、地上波アナログは地上波デジタルとの同時放送が中心で、βCAM、DVCAM、DVCPRO等の4:3比率SDキャメラによる映像はアナログ放送ではそのまま、デジタル放送にはアップコンバートして放送されている。アップコンバートしたHD画面では左右の画像が足りなくなるが、放送局や番組のロゴ等を壁紙風にして違和感をなくしている。この場合は撮影時の画角は変わらないため問題は無い。
 しかしハイビジョンの地上波デジタル放送をペースに制作したHD番組ではそうは行かない。HDCAMやDVCPROHD等で撮影された16:9の画面の左右をカットした「エッジクロップ方式」でダウンコンバートして放送されている。実はこのエッジクロップがキャメラマン泣かせというか制作泣かせである。
 ワイド比率で撮影しつつも4:3マーカーを意識して作画しなければならない。人物のアップを撮影する時、ワイド画面ではフォローする必要の無い動きも4:3画面でははみ出してしまうため、動きをフォローしなくてはならない。ところがその画面を16:9で見るとチョコチョコ動く落ち着きの無いキャメラワークなってしまう。仕方がないので少しルーズにすると今度は突っ込みの足りない絵になってしまうのだ。また4:3ではバランスのいいツーショットも16:9では中途半端な見切れがあり、横の人の顔が半分だけで切れてしまったりする。
 今日関テレで「襲名!坂田藤十郎〜よみがえる元禄歌舞伎の花形」を放送していたが、画面端にいる人物の顔が常に切れていて一瞬「下手なキャメラ」と思ってしまった。しかし同時放送の地上波デジタルを見ると全く問題の無いフレーミングで撮られていた。おそらく制作時の意思疎通がうまく行かず、エッジクロップでの同時放送であることが伝わっていなかったのだろう。中村鴈治郎改め四代目坂田藤十郎の奥様である前国土交通大臣の扇千影さんの顔が切れてしまっては良くない。これでは扇千切れである。
 この画面比率の問題は見る側も戸惑うようだ。16:9のワイド放送ではなんら問題ないが、4:3をズーム機能やスムーズ機能によってワイドテレビの比率に合わせて見ている家庭では、中心の人物は正常に見えても、左右に写っている人物は横幅が広がってしまう。これではスリムな女優さんもブタになってしまう。また、キャメラが左右にパンしたときには曲げガラス越しに見たかのような感じでグニャグニャと歪んでしまう。やはり作画時のバランスで視聴していただきたい。
 私はHD、SDの同時放送ではエッジクロップでのダウンコンバートではなく、画角が変化しないレターボックスで放送してもらいたいと思う。撮影が16:9のみで行えることが何よりである。ただし従来の4:3SDキャメラの画像がレターボックスにはめ込まれると一層小さくなってしまうという問題は残ってしまう。地上波アナログ放送の電波が止まり、全ての放送が16:9ワイドになるときが待ち遠しい。

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| 映像制作・撮影技術 |
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