2006年01月14日(土)
ビンテン
 ビンテンとはイギリスの三脚メーカーのことだ。
 ビンテンと並ぶもう一つの三脚メーカーはサクラーだ。英国製とドイツ製で性格は全く違うが性能は同レベルで、いずれも業界トップレベルのものである。性格が異なるため、キャメラマンもビンテン派、サクラー派に大きく分かれる。ちなみに私はビンテン派になる。
 三脚というとどうしても足の部分を思い浮かべるが、重要な部分はキャメラを保持するヘッドである。脚は頑丈で軽量なら特に問題は無い。タワミやネジレを起こさない剛性と、スピーディーな高さの調整が出来ればよい。
 問題はヘッドである。約10kgのテレビキャメラをキャメラマンの意図通りに振るために様々な機構が備えられている。まずキャメラの重量を打ち消すためのカウンターバランス。キャメラを上下に振る(縦パン)場合に、回転の中心がキャメラの重心にないためにキャメラを止めたいところで止めることができずに重力によって引っ張られてしまう。ビンテンではカウンターバランスを連続可変させることで、キャメラの重量に対するカウンター量を最適に調整できる。メーカーではこれを完全バランスと呼んでいる。またサクラーも数種のカウンター値を組み合わせることでかなりいいバランスに調整できる。2者の違いは正確さをとるか、敏速さをとるかの違いだが、これは使い手の好みで評価が異なる。
 カウンターバランスと同様に重要なことは動きの滑らかさである。ただ単に滑らかさを求めるのであれば、ベアリングを入れれば良いのだが、動く速度をコントロールすること、すなわちパンのスピードを自在に制御するためには様々な機構が必要となり、各社ともシリコングリス等による抵抗(フリュードドラッグ)を備えている。フリュード:Fluidとは流体のことで、ドラッグ:drag(釣りでは一般的にドラグ)とは抗力のことだ。ヘッドとはまさに流体力学の塊である。ヘッドは一定の力を加えた時、滑らかに動き出し、力を抜くと滑らかに止まること、かつ速いパンもゆっくりとしたパンもドラグ量の調整で速度を決められることが理想的なヘッドである。逆にそのようなヘッドであればドラグ量を一定にして、力の強さで速度をコントロールすることも容易に行える。
 残念なことに国産ヘッドでは未だ完成域に達していないと思う。デモ機などで触ってみると、無負荷(キャメラが乗っていない状態)ならかなりいい動きをするようだが、いざ負荷がかかると歴然とした差を感じてしまう。このあたり、日本の精密加工技術を発揮してもらいたいものである。ただしビンテンやサクラーの場合は国産モデルの数倍の価格で、例えばビンテンのビジョン100では100万ほどになる。それでも我々キャメラマンがビンテンにこだわるのはその性能であり、キャメラワークとして残るからである。三脚のヘッドに限っては「弘法は筆を選ばす」は通用しない。
 なお、大型の中継キャメラでは必ずといって良いほど国産メーカーの昭特に軍配が上がる。ビンテンのベクターシリーズよりも昭特を好むキャメラマンは非常に多い。余談だがビンテン傘下になったイタリアのマンフロット社では三脚〜ヘッドのことをキャメラサポートと言っている。私はこの言い方が好きだ。
※本文中でサクラーと書いているが、SACHTLERをザハトラーと読む人が多くなった。そしてこの読み方が正しいのはオフィシャルであるSACHTLER JAPAN CORPがザハトラー・ジャパンと書いていることで明らかだが、なぜか業界OB達はサクラーと呼び続けている。もちろん私もサクラーと呼ぶが「赤信号、みんなで渡れば怖くない」といったところだろうか。


2006年1月14日 | 記事へ | コメント(2) |
| 映像制作・撮影技術 |
ご訪問、ありがとうでした〜。ログをみて、すっとんできましたよ^^また、こちらも訪問したいと思います^^;;42才おばさま、よろしくね^^;
こんばんは。初めまして。
技術系のうさんくさいブログですが宜しくお願いします。
他ではソフト(ソフトすぎて解けています)なのも書いています。
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