2006年11月06日(月)
映像制作 WEB制作
 「映像制作 WEB制作」だ。困ったものである。私の会社ではWEB制作は行っていない。検索されてくるページはトップページだが、今時のWEBデザインからは程遠いものだ。以前にも書いたがWEB制作は範疇ではない。もちは餅屋というか、ただ二足のわらじは履きたくないだけである。
 「映像制作 WEB制作」を見ると検索されたサイトは何と364万件である。中にはWEB制作・映像制作・印刷物まで行う会社や、SNS構築までやってのける会社まで出てきた。一体何時ごろから映像制作とWEB制作が繋がりだしたのだろうか。
 以前東京の映画監督が「映像屋さんはコンピューターが苦手なところが多い」と話されていた。理由を聞くと「未だにメールじゃなくてファックスなのよ」ということだった。確かにそうだ。撮影の連絡事項はメールよりもファックスが圧倒的に多い。だがコンピューターを使わないわけではない。たとえば編集用のテキストデータは勿論メールで送られ、画像や音源も今はインターネットを利用する。それどころか、仮編集の確認はWEBサーバーに高ビットレートのWMV動画をアップして行っている。これは米国に支店を持つ取引先との仕事においては必需品となっている。
 ところが撮影の業務連絡は何故かファックスが多い。特に私の会社が関係するTV放送の制作会社はそうだ。たまたまかも知れないがファックスが多い。やはり「確実に届いた」という安心感がその理由のようだ。ただし台本やコンテはメール添付のxlsやppt、doc、pdf、ai等になる。つまり敢てメールを避けているともいえる。利便性よりも確実性ということだろう。勿論そういった取引先へは私の会社からもファックスを送る事になるが、送信はファックス機からではなくマックOS付属ののAppleFAXを今も使っている。何故マックでファックスを送るかと言うと、AppleFAXやfaxSTFの場合は読み取りによる汚れやズレが生じないため、電話回線を利用した遠隔プリンター同等の高品位な印刷が可能だからだ。
 さて、映像制作とWEB制作がどうして同じ会社から生まれる事になったのかを考えよう。まず考えられることは「インターネットやコンピューターを使えば何でもできる」というPC会社の営業だ。以前こういった夢のような営業戦略に推されて専用線やサーバーなどに莫大な投資(今では微々たる投資で可能なことだが)を行った映像制作会社が採算が取れずに撤退していったことがあった。ところがWindowsやMacintoshが普及し始め、極めて安価なソフトウエアによって極めて簡単にWEBページが作れるようになった。さらに世の中の殆どの企業がホームページを保有していなかったという時代背景から、映像の数十分の一以下の設備投資と少人数の専従スタッフで運営できる収益性の高さによって、それまでWEBを扱わなかったプロダクションもこぞってWEB制作に乗り出したのである。このあたりが映像制作会社をWEB制作に走らせた起源ではないだろうか。
 そしてWEB制作会社が映像制作を始めた起源だが、それまでDTP分野で養ってきたコンピューターと画像処理のスキルをもとにWEBページの制作を始めたDVP分野に、Flashなどの操作を学んだ若者がSOHOとして進出してきた。つまりデジカメとパソコンさえあればWEB制作会社を始められるという起業ブームだ。そしてminiDVとiLinkの普及がWEB制作ベンチャーのDTV分野への進出を加速した。10万から20万程度の家庭用DVキャメラとプレミアをバンドルしたマルチメディア対応パソコンの普及がその原動力となったようだ。まだDVDが普及していない頃、バイオはDVで撮影した素材をiLinkでキャプチャーし、プレミアで編集の後、簡単にVideo CDを焼くことが出来た。当時DVとバイオを導入して映像制作をスタートさせたWEB制作ベンチャーはまさに雨後の筍だった。ちょうどその頃「アウトソーシング」という言葉が流行し、私の会社へも訳のわからない会社やSOHOからの撮影依頼が増え始めた。
 仕事が増えるのは良いが、業界の約束事を理解できていない上に、価格に対する基準も異なりすぎた。DV感覚の物差しではベーカムやデジベでの撮影費や照明費を理解することが出来なかったのである。つまり放送用キャメラは押せば写るものではないということが理解できていなかったのだ。VEやTD、LDなどという言葉や仕事どころか、演出ということの意味も知らずに「映像制作会社」の看板をホームページに挙げるという怖いもの知らずの営業ぶりだ。いくらアウトソーシングと言われても安すぎる仕事は断らざるを得ない。こいった会社がネット上に「価格破壊」を合言葉に機材費にもならない撮影、編集費を掲載したために、当然それなりの影響を受けたことも確かだ。クライアントによっては「ココがこれだけで撮影すると言っているんで」と値切られ、我々や我々の同業者(私の会社と同レベルかそれ以上の会社)は「それでは人件費にしかならない」とお断りした仕事も出てきた。仕事は増やしたいが、自らが血を流してまで安すぎる仕事を受けるようなことは避けてきた。
 こういう状況の下、映像制作に対する認識が薄いクライアント(代理店)は案の定格安業者の餌食となり、納品後顧客からクレームを付けられるという結果になってしまった。結局それらの仕事は再び我々へUターンとなったのである。しかし我々も低価格化への努力は行っていた。抑えるべき費用は抑えて、必要なものは必要とした「リーズナブルな価格」を打ち出したのである。「リーズナブル」=「低価格」と誤解している人もいるが「リーズナブル」=「納得できる」である。
 もしあの時代に見さかいも無く「WEB制作」や「価格破壊」を打ち出していたのなら、今頃千里ビデオサービスは消えていたのではないかと思う。私の会社はWEB用にはストリーミングファイルの提供とエンコードしか行わない。我々の仕事は映像制作であり、撮影技術会社である。

2006年11月6日 | 記事へ | コメント(2) |
| 未分類・エトセトラ.etc. |
おはようございます。
わたしの会社の上司も価格破壊は間違っていると言います。
価格破壊で利益を減らせば結局社員に皺寄せが来るんでしょうね。
必要な費用は頂いても、余分な費用は頂かないことがリーズナブルです。
会社案内のビデオが30万円で作る会社って・・・?
自分で自分の首を絞めるのは勝手だけど、周りに迷惑をかけてるって考えていないと思います。
ご同業さん、お早うございます。
390円を290円に下げた幸楽苑ラーメンの社長さんは辞任しました。
周りに迷惑をかけてることを理解できていないと思います。
先日某社が投げ出したパチンコ屋さんのグランドオープンのビデオを編集しましたが、5日間の作業で40万戴きましたが、これでも安いはずです。
>会社案内のビデオ30万円
趣味でビデオ制作しているならそれでもかまいませんが、
撮影技術と照明技術だけで30万は必要ですね。
演出と編集をボランティアに頼むんでしょうか。
30万で作る方も作る方だけれども、そこに頼むところも頼むところですわ。
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