SHURE FP-31
SHURE FP-31である。オークションに出品でもされていたのだろう、複数の検索が有った。SHURE(シュアー)のフィールド音声ミキサーで正式な名称は-を含まないFP31である。
SHUREには現在グローバルサイトがあり、日本語のページshure.co.jpも充実している。そこにあるShureについてではShure Incorporatedの歴史が掲載されている。その中のFP31についての記載では
1983「その時代で最も大きな革命を起こした屋外中継用ミキサ」としての賞賛を受ける、FP31ミキサを発売。その重量はわずか約1 kg。放送用カメラへの接続も容易で、かつてない高い機動性をニュース収録現場に提供。 と書かれていた。下の写真が私の会社にあるFP31だ。とてもシンプルなミキサーだがAB-12V/P-48Vの双方にスイッチの切り替えで対応している。今では当たり前の機能だが、当時としては画期的だったようだ。
今のテレビ放送やDVDなどの音声はステレオや5.1chサラウンドが主流だが、それらのプログラムのインタビューなどのENG収録現場では基本的にモノラル収録だ。カムコーダーの音声トラックは2ch又は4chに対応していてもミキサーからカムコーダーへは1本のケーブルだけで結ばれる。つまりCH-1に鼻マイクの音声、CH-2にミキサーからの音声を入れる。(操作の具合で逆にすることも多い)ENGの定番ミキサーと言われるシグマのSS-302も緊急用にステレオミキサーには使えるが、基本は切り替え式ワンメーターでリミッターもA出力にしか備わっていない。つまりモノラル使用が前提である。
私の会社で最も稼動しているフィールド用ミキサーはやはりSS-302であり、時にENGが重なったりするとFP31が今も稼動する。数年前にボリュームの交換を実施して状態は非常にいい。ただしSHURE FP32もそうだが、ボリューム操作のフリクションが少ないため、うっかりすると手が触れて回ってしまいそうだ。余分な気を配らなくていいように私の会社のFP31はツマミとボディーの間に水道用のゴムパッキンを入れてフリクションを効かすようにしている。もちろんこれはホームセンターマニア私がコーナンで買ったものだ。
入力は3系統あり、MIC/LINEがそれぞれ切り替えることが出来る。当時の日本では入力側が雄の12Cだったが、さすがにSHUREは米国仕様の11Cになっていた。
入力側と同様に出力側でも逆になっている。当時の国産のミキサーがメスの11Cになっていたにも関わらず、FP31はオスの12Cであり、ベーカム一体型VTRとの接続には11C/11Cのメス/メスケーブルが必要だった。今日ではシグマのSS-302も米国仕様に変わり、またVTRも入力側が11Cになったために12C/11Cのオス/メスケーブルのみで繋がるようになった。
バッテリーは006Pを3本使用する。ただしファントム電源を使わないのであれば2本でよい。アルカリ電池で連続8時間以上の運用が可能だ。また、リミッターのスレッショルドレベルは半固定ボリュームによって調整できるようになっている。
またSHUREではUser Guides and Spec Sheets Discontinued Mixers and DSPとして旧製品のマニュアルを今も提供している。FP31は古い製品だが、今なおPDFでダウンロードできる。マニュアルの回路図を見て判るように、FP31は入力側、出力側にそれぞれトランスを持った平衡入出力になっている。ローコスト化のために電子バランスを用いたミキサーとは違う。
新製品ラッシュの現代だが、旧製品のテクニカルデータを継続して公開するSHUREの姿勢に好感が持てる。
SHUREの企業理念を引用させていただこう。
企業理念
1925年の創業以来、自らの演奏を観衆のもとに届けたいと願う、ユーザーの情熱は私たちの原動力であり続けてきました。「Your Sound.」私たちは、この言葉を理念とし、ボーカルや楽器演奏の魅力やニュアンスを忠実に収音し、聴衆のもとに届ける製品を開発しています。
そして今、Shureの製品はライブシーン、レコーディングスタジオや放送局、学校やホールなどさまざまなシーンで幅広く活用されています。
発売以来40年にわたり世界のトップセラーであり続けているマイクロホンモデルSM57/58のように、Shureのオーディオエレクトロニクス製品が長年にわたり、世界中で使用され続けていることは、私たちが得た信頼の実績であり、誇りでもあります。
創業80年の区切りを迎え、これからも私たちは、ワイヤレスシステム、ミキサ&プロセッサなどのプロフェッショナル製品から、フォノカートリッジや高遮音性イヤホンなどの一般向け製品まで、お客様のニーズに合わせた高品質なオーディオツールを提供して参ります。 この中で書かれている発売以来40年にわたり世界のトップセラーであり続けているマイクロホンモデルSM57/58はまさにSHUREを象徴するものだ。同様にロングセラーを続けるメーカーにドイツのノイマンがある。さて、日本のメーカーにこれほどロングセラーを続けるメーカーがどれほどあるのだろうか。ふとソニーのC-38Bを思い浮かべるが、往年のソニーマイクのラインナップに比べると現在の製品群はあまりにも少なくなってしまい残念だ。
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2008年10月21日
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