タンノイSTRATFORDという検索が10件以上あった。検索元はヤフーとグーグルだ。どうやらオークションに出品されていて、その詳細を求めて検索していたようだ。検索結果をみると確かにSTRATFORDが出品されていて思わず欲しくなってしまった。しかし残念ながらゲストでは入札できず、諦めるしかない。危険という訳ではなく、オークションの「写真だけを頼りに、顔の見えない相手と取引する」というシステムに抵抗がある。
STRATFORDはタンノイの代理店がTEACに替わってから出たモデルで、当時定価は128,000円で実売1本=90,000円ほどだったように思う。このあたりの記憶はあいまいだが、今も現役でスタジオモニターとして使っている。それまで使っていた日立のHS-500のウーハーが飛んでしまったため、私が使っていたSTRATFORDを急遽会社に供与してそのままである。ウーハーの死んだHS-500は今も修理できないで眠っている(中古のHS-500用ウーハーがあればすぐに現役復帰できるのだが・・・)一応オークションをやっている音響さんには「出たら落札してほしい」と頼んでいるのだが、なかなか見つからないようだ。
私がタンノイと出会ったのは30年以上前のことだ。当時趣味で真空管アンプを設計していて、上杉佳郎氏の回路などを参考にKT-88ULや2A3PP、2A3シングル、300Bシングルなどを作って楽しんでいた。出力トランスはこのブログでも何度か登場している田村製作所のものとタンゴ、山水などである。当時「タンノイには真空管アンプが良い」と言われ、ラックスのCL-35で自作パワーアンプを駆動してオール管球式のシステムを構成していた。
その時のスピーカーはタンノイVLZというモデルで、同軸2ウエイのものだ。モニターゴールドと呼ばれスピーカー中央部のコアに複数の孔があり、それがユニットの背面にまで貫通している。そこにアルミダイヤフラムのツィーターが付けられている。それは一種のホーンツィーターをといえるユニークなものだった。VLZよりも大きいGRFやオートグラフなども同じ同軸構造になっていて、大きなシステムであっても抜群の定位感を出していた。
タンノイが優れていたのはスピーカー単体のみではなく、箱(エンクロージャー)が優れていることだった。材料や形態が吟味され「タンノイのユニットはタンノイの器に入ってこそタンノイ」と言われていた。国産エンクロージャーにVLZを入れてもそれはタンノイではなかった。そして英国人の音楽性がスピーカーシステムとして表現されていたのだ。
このブリティッシュサウンドを支えているのがSMEのトーンアームだ(と、私は思っている)。3009UからタイプVを使い、その後チタンアームのタイプWまで使った。タイプVとタイプWは今も私の書斎で現役で活躍している。日本製が悪いというわけではなく、物理的な特性は日本が世界一である。ただしそれを製造する人々の環境が違った。いたるところで音楽会が開かれ、子供のときから生演奏に触れてきた生活習慣である。戦時中、日本人が学徒動員され、婦人たちが竹槍を持っていた頃にも、英国では音楽会を楽しんでいたそうだ。(日本と同盟国だった独逸でも同じように戦火の中、音楽会が開かれていた)勝てるはずはない。
ただし、最近の日本ではONKYOが聴感最優先で様々な努力をし、音楽性豊かな製品を世に送り出している。日本のオーディオ製品も世界に通用する音楽性を備えてきたようだ。今後の進捗状況が楽しみである。
色々書いたが、最近はゆっくりレコードを聴く暇がなくなってしまった。レコードの溝にゆっくりと針を落としてゆったりと音楽を楽しみたいものだ。一歩下がって様々なことが考えられるだろう。
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