2007年11月14日(水)
フィールドオーダー
 「フィールドオーダー」に苦労した。というのは、他社から依頼された仕事でAfterEffectsで作られたHD/1080iのファイルをDVCPROHDに書き出していた時のことである。

 もしこれが720Pで作られたものなら全く問題の無いことなのだが、放送標準のインターレースではややこしい約束事がある。音楽で言えばCで始まるはずがC#で始まってしまったような状態になる話だ。
 テレビの映像はSD(従来放送)の場合480本、HD(ハイビジョン)の場合は1080本の走査線が有り、1秒間に約30枚(正確には29.97枚)の画像で構成される。しかしこのままではパラパラアニメとは言わないが、動きのある被写体がパラパラと動いてしまう。そこで考えられた方式がインターレースといい、1/30秒のフレームを構成する走査線を1本おきに表示して行く。静止画として見た場合は動きのある部分が二重にぶれたようになるが、連続した動画を見るとたいへん滑らかな動きを見せてくれる。このインターレース画像の1枚をフィールドと呼び、1/59.94秒が1フィールドになる。映像(テレビ)の世界では1本目、3本目、5本目・・・・・で構成されるフィールドを奇数フィールドと言い、2本目、4本目、6本目・・・・・を偶数フィールドと呼ぶ。というか、呼んでいた。
 何故「呼んでいた」かというと、映像にコンピューターが関わってきてからCG業界では0本目、2本目、4本目という数え方が行われ、フレームを構成する最初のフィールドが逆転してしまったようだ。つまり従来テレビ業界で奇数フィールド(ODDフィールドや、UPフィールドとも呼ぶ)で始まったフレームが、CG業界では偶数フィールド(EVENフィールドや、DOWNフィールドとも呼ぶ)が最初のフィールドになってしまったのかもしれない。元々コンピューターの画面はインターレースではないノンインターレースが使われていて、それをテレビに変換するために走査線を1本ごとにインターレースして書き出すために生まれた話である。憶測だが、コンピーターで用いる二進法の関係で1本目を0本目と数えたのであろう。
 少し本題から離れたようだが、順序に奇数、偶数を用いると混乱が生じるために最初の走査線を含むフィールドをトップフィールド(Top Field)、次の走査線で始まるフィールドをボトムフィールド(Bottom Field)と言う。そしてボトムフィールドで始まる規格をボトムフィールドファースト、またトップフィールドで始まる規格をトップフィールドファーストということになる。そしてノンインターレースで作られるCG(1秒間に60枚)をインターレースに変換する時間的な順序はソフトウエアのレンダリング設定で自由に変えることが出来てしまう。ところがここでまたややこしい話があり、モーショングラフィックスの代表的なアプリケーションであるAdobe After Effectsのフィールドレンダリングの設定では「奇数フィールドから」「偶数フィールドから」という用語が使用されている。こうなればクリエイターも混乱してしまうだろう。
 さらにビデオの規格も困ったもので、家庭用のDVや放送用のDVCPRO50ではボトムフィールドファーストが標準規格で、D1のコンポーネントデジタルではトップフィールドファーストが標準規格になる。そして今回苦労させられたDVCPROHDやHDV、HDCAMなどのハイビジョン規格ではトップフィールドファーストが標準規格になる。このことを理解できていないクリエイターがフィールドオーダーを間違えて書き出したために規格外のイレギュラーファイルとなってしまった。幸い書き出しに用いたCanopus EDIUSはクリップのフィールドオーダーを変更できる機能があるためにAfter Effectのファイルを差し戻す必要は無かったのだが、編集環境によっては対応できなかったりする。
 ITU(International Telecommunication Union)では様々な規格があり、フィールドオーダーについても規定されているが、フィールドオーダーの規格については無償公開されたデータがWEB上に見当たらない。しかしカノープスが公開しているデータは参考になるだろう。CGクリエイターの方には是非一読していただきたい。

 気楽なことを書いているが、今月から来月にかけてはそれどころではない。明日は東京出張となり青山のスタジオでMA、同時進行で岡山で別班がVPロケ、そのまま別なVPで津山の院庄でロケ。私は帰阪して2本のVP編集と録音、そしてCATV2007inKANSAI、そしてその後3日間のVPロケ、さらに同時進行で和歌山ロケ。そして月明けにビジネスマッチング博2007の中継録画・・・・etc.
 忙しいほど元気が出るのはまだ若いからか、それとも年の功なのか。分刻みのスケジュールの中に暇を見つけてブログを書くことが楽しい。

 写真は中津にある三和ビデオセンターの収録スタジオ。仕事をしていることが楽しい今日この頃である。

2007年11月14日 | 記事へ | コメント(2) |
| 技術系・ハイテク系 |
第1フィールドは偶数フィールド、第2フィールドは奇数フィールド

第1フィールドは偶数フィールド、第2フィールドは奇数フィールドであることは、
NHKエンジニアリングの小助川さんが2003年6月に送ってくれた
FCCの同期信号図で知りました。
FIELD 1 OR EVEN FIELD
FIELD 2 OR ODD FIELD
とあります。(私は今までちゃんと見ていませんでした)

走査線が左上から始まる第1フィールドは、263番目の走査線が0.5Hで終わり、
残りの0.5Hは、第2フィールドの走査線として、
第1フィールドの第1走査線の右半分上に位置します。
第2フィールドの一番上の0.5Hが位置としては1番上です。
第1フィールドの第1走査線は2番目の位置です。
第1フィールドの走査線は偶数番目の位置で偶数フィールドとなります。
第2フィールドの走査線は奇数番目の位置で奇数フィールドとなります。

FCCの同期信号図と、
TEKTRONIXのWFMのFIELD切り替えスイッチに
ONE(EVEN)、TWO(ODDの表示があることから、
1968年ごろ、小助川氏が、NHKの全国的な機関紙に
「第1フィールドは、偶数フィールド」というコラムを掲載したら、
NHKの全国の技術者から、質問の電話がかかり、仕事にならなかったそうです。

私は2003年7月中に、正確で詳しい図を手書きで作成し、
大阪芸術大学短期大学部広報学科学生と
大阪芸術大学映像学科学生に配っております。

AVIDから書き出す時は偶数フィールドを指定しなければなりません

======================
元毎日放送制作技術局長
現大阪芸術大学映像学科
  大阪芸術大学短期大学部広報学科

北浦堅次
北浦さん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

>1968年ごろ、小助川氏が、NHKの全国的な機関紙に
「第1フィールドは、偶数フィールド」というコラムを掲載したら、
>NHKの全国の技術者から、質問の電話がかかり、仕事にならなかったそうです。

第1フィールドが偶数フィールドということを私は最近知りました。私と同様に、1,3,5,・・・フィールドを奇数フィールドと思っている人は多いのでしょう。

記事に書いた
「映像(テレビ)の世界では1本目、3本目、5本目・・・・・で構成されるフィールドを奇数フィールドと言い、2本目、4本目、6本目・・・・・を偶数フィールドと呼ぶ。というか、呼んでいた。」というのは間違いですね。
でもこれを正しいと思い込んでいる人は今もけっこういらっしゃるみたいです。

やはり混乱の原因はアプリケーションが未だに奇数、偶数という表現を使っているからでしょうか。Premiereも「偶数フィールドを使っています。」
第1フィールドを含むフィールド=トップフィールドということで正しいのか不安になってきました。
それと走査線数をつい有効走査線数の480本や1080本と勘違いしてしまいますが、525本、1125本なんですね。PCを触っているとどうしても有効走査線数が全てと思いがちです。実は最も重要な要素なんですね。

正式な技術さんから見ると間違いだらけのブログですが、今後ともご指導ください。よろしくお願いします。
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