2007年10月20日(土)
「SIGMA SS-302」だった。言わずと知れたENG定番の3in/2outのポータブルミキサーだ。一時製造中止になっていたが、現在再生産が行われている。廉価版のKS-T2000が出てもSS-302の人気は高いようだ。また、今日ではプロテックからFS-302PというSIGMA SS-302によく似たミキサーや、SIGMA KS-342に似たFS-40Xが発売され、現場でもプロテックを使う音声さんが増えている。
写真は先日の中継現場で使用したSS-302だ。神奈川と神戸を光ファイバーのメガリンクで結んだ双方向中継での技術連絡用のインカムアンプとして使った。下の写真が千里ビデオサービスオリジナルのヘッドセットだ。本線の音声にはTAMURAを使用し、インカム用にSIGMAという少し贅沢なセットである。現場の様子はField Reportに掲載している。
フジヤエービックやシステムファイブの通販を見ていただくとわかるように、放送用の音声ミキサーは高い。もっと安くならないのか?と思う。しかしその回路構成や小型ボディーに凝縮された機能、そして出荷台数を考えると当然かもしれない。製造メーカーは製品の販売コストに製造コストだけではなく、サービスコスト、開発コストも含まなければならないのである。放送用キャメラ、レンズ、三脚なども同様に民生モデルとはかけ離れたコストがかかっている。それらは全て高性能、高信頼性、高耐久性のためなのである。そして映像のデジタル化が進むとことで音声ミキサーもAES/EBUのデジタル音声出力が必要になってきた。
|
2007年10月20日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
2007年06月01日(金)
2007年04月28日(土)
「3009 オイルダンプ」である。SME9009にオイルダンプが採用されたのはシリーズVからだ。しかし一時シリーズUのオプションとして、というかユーザーの要望によってオイルダンパーが販売されたこともあった。
シリーズVのオイルダンパーはいたって簡単なものだ。トーンアームのベース側(動かない方)に粘性を持ったシリコーングリスの桶があり、トーンアームに小さな櫂(ボートでいうオール)のようなパッドを取り付けてオイルの中に浸す構造になっている。
このダンパーによってトーンアームはゆっくりは動くが、早い動きは抑えられることになる。自動車のスタビライザーのようなものだ。パッドは大きさによって3種類あり、白、黒、灰に色分けされている。反りの無いレコード盤では最も大きい物が使えるが、反りが大きいレコード盤ではトーンアームが反りに追従できず、カートリッジのカンティレバーに負荷がかかることになる。そのために超低域の信号が発生すると同時に、トレース能力も低下してしまう。またオイルが柔らかすぎたり、パッドが小さすぎてはオイルダンパーの意味を成さない。意外と調整が面倒である。しかし程よく調整された状態ではトーンアームの共振も抑制されてトレース能力は向上する。そしてオイルダンパーの最も効果が現れる低域の過渡特性が格段に向上する。チューニング如何によっては良くもなれば悪くもなる。つまり両刃の刃である。
3009シリーズVのシステムはF1カーのサスペンションのようだ。レコード盤がサーキットで、スタイラスがタイヤであり、カンチレバーとゴム、トーンアームの水平回転部分のマイクロピポット、垂直支持部のナイフエッジとオイルダンパーが懸架装置になる。路面(盤面)状況や気温によってベストなチューニングを求められるオーディオなど、今の若者に理解してもらえるだろうか。だが3009の動きは見ているだけで楽しいのである。
|
2007年4月28日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
2007年04月15日(日)
「PL-41D」である。PL-41Dとはパイオニアのベルトドライブ式アナログレコーデッドディスクプレーヤーシステム要するにレコードプレーヤーだ。写真は私が使っているPL-41A改←(紫電改のように一部を改良したもの)で41Aオリジナルの4極ヒステリシスシンクロナスモーターを8極のものに換装し、進相コンデンサーとプーリーも2倍の直径のものに換装している。つまり8極になることで回転数が1/2になり、ゴロが減少しS/Nが良くなる。これが検索キーワードにあるPL-41Dである。このPL-41Sからトーンアームを除いたフォノモーターがMU-41Dという品番で販売されていた。今から40年近く前のことだった。
上の写真は太くなったブーリー部分。
これはシャーシに直付けしたSME-3009/SV。チタンアームが美しい。私は昔からSMEのファンで、SL-1200にも3009/SUを使用している。
今回のキーワードで検索されていたページはブロガリの「タンノイ GRF」だが、そこでもPL-41についてこう書いていた。
40年程前に購入したPL-41Aにはオリジナルのトーンアームが付いていたが、ダイキャストボディーを加工し3009に換装して使用していた。その後モーターの回転数が1/2になったPL-41Dという8極モーターを搭載したモデルが発売され、モーター、プーリー、進相コンデンサー、軸受けを交換してPL-41Dと同等に改造し、トーンアームも3009/SVに交換した。またその時、FR(フィディリティーリサーチ)のトロイダルコアトランスを用いたFRT-3型MCカートリッジ昇圧トランスも内臓した。このトランスは機械生産できず、手作りによるものだそうだ。
当時ターンテーブルとしてMU-41が発売されていたが「ターンテーブルとトーンアームは分離せず、剛体でひとつに結ばれているべきである」という考えからダイキャストに穴を空けてトーンアームを直付けしたのだ。さらにオリジナルの木製箱に漆黒のピアノ塗装を施した。
この古いターンテーブルのリペアパーツは今も入手可能で、拙宅では当時の性能を維持しつつ元気に回っている。私にとってはトーレンスやガラードの名機以上の名機として愛着は深い。
この考えは今も同じであり、40年も前のオーディオ製品が今尚現役で使えることに喜びを感じている。そして今では私の息子がこういった往年の名器を大事に使い続けてくれることにより大きな喜びを感じている。
|
2007年4月15日
| 記事へ |
コメント(9) |
| 音声・録音・音響 |
2007年03月07日(水)
「VTR編集 音声レベル管理」だった。
音は普通目には見えない。そのためにレベル管理は視覚で確認できるオーディオメーターやオシロスコープで行う。最近は編集システムがアナログからデジタルに変わり、殆どの人はデスクトップに表示されるオーディオメーターで行っているようだ。しかしデスクトップに表示されるメーターはその殆どがピークレベルメーターであり、VUメーター(ボリュームユニットメーター=音量単位計)で見ることはまず無いだろう。
ところが実際の音量感はピークレベルでは管理できない。例えば小鼓の音などは感じている以上に強いレベルで録音され、ピークでは他の楽器よりもはるかに高いレベルを示す。録音時、特にデジタル録音時は許容範囲を超えると機器によっては歪だけではなく、音の消失などを起こすものがあり、必ずピークレベルを管理しなければならない。しかし編集時にはそうはいかない。トータルの音量感を管理し、圧縮などもかける必要がある。このときに重要なメーターがVU計である。VU計の振りは人間の感じる音量感とよく似ていて、ピークレベルとは全く異なった振りを示す。ピークレベルばかり気にしているとなんとも情けない、迫力に乏しい音に仕上がってしまうのである。もしピークレベルのみで管理しているのであれば、是非VUメーターを体験していただきたい。
(少し強引な表現だが)電圧=エネルギーで、パワー(電力)=電流×電圧である。ピークレベル(電圧)ばかり気にしていてはパワー不足となる。必要な電流を流してこそ強大なパワーが生まれるのだ。
「VTR編集 音声レベル管理」だったので、メーターのことばかりを書いたが、メーターよりも重要なものはやはり人間の聴覚である。聴きなれたモニタースピーカーと、歪の無いアンプが何よりも大切なことは言うまでも無いことだ。数年前に日立のHS-500のウーハーが飛んで以来タンノイのSTRATFORDを使っているが、今ではこの音をリファレンスとして聴けるようになった。音声の編集では自分の耳をメーター以上に研ぎ澄ます必要がある。
写真は私の会社のノンリニア編集室で使用しているサウンドクラフト製のVUメーターである。
|
2007年3月7日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
2007年02月26日(月)
「タムラ TS-4000S」というキーワード。15年ほど前に購入したミキサーだが安定している。現在2台使用しているが、先日現場で1CHの調子が悪くなった。仕込日で時間が合ったため、現場でバラしてみるとボリュームの足の半田が浮いていた。簡単な修理ですぐに復帰して問題はなかった。TS-4000SはENGミキサーよりふたまわりほど大きく、ICは使用されていないためにゆったりとした構造になっている。これがENGで使用しているシグマSS-302ではそうもいかない。かなり小さく、複雑な構造になっているために、メーカーのサービスマンでなければ触れない。
EFP収録で私がTS-4000Sに拘る理由はヘッドが広く、さらにトランス式のバランス入力回路を持っているために電位差があってもノイズが乗ったりしないからでる。先日テレビレンズの名器としてJ14×8を挙げたが、このTS-4000Sもいわば名器である。メンテナンスさえきっちりしておけばまだまだ使用可能なミキサーと言えるだろう。
|
2007年2月26日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
2006年12月29日(金)
今年も後数日で終わろうとしている。2006年のラストスパートで、連日バタバタとしていてBloGariの更新が止まっていた。そして最終の仕事がカウントダウンイベントになったために、もうしばらくは更新の頻度がそうだ。
させ、今日の検索キーワードは「クレードルサスペンション」だった。これはマイクをゴムなどの緩衝によって床からの振動がスタンドを伝ってマイクに雑音として入らないために使うものだ。クレードルとは「ゆりかご」の意味で、サスペンションは自動車のサスと同じく「懸架装置」を意味する。クレードルサスペンション(Cradle suspension)を用いることで得られるのは何よりも安心感であり、実際にはそれほど大きな効果は無い。何故かといえば、市販品で使用されている懸架用のゴムひもが強過ぎるからだ。これまで使ったもので効果が高かったものはゼンハイザーの製品で、非常に細いゴムが使われていた。そのため、短期間でゴムが劣化し、消耗部品として定期的な交換を余儀なくされる。けっこう不便なものである。そういう点では大きな効果は無いものの、ソニーのクレードルサスペンションに使われているゴムひもは長持ちする。これは髪の毛を結ぶゴムひもと同じもののようで、古くなればコンビニや100円ショップで入手出来、細めのものを緩く張ることでゼンハイザー並みの効果を得ることも出来る。
クレードルサスペンションが収録にどれほど必要か、必要でないかは別として、重要なことは録音に対する気配りである。マイクスタンドに鎮(シズ)や防振ゴムを付けたり、マイク周辺の床に毛布を敷くことと同様に、目に見えない音を録音することへの配慮である。そして拡声と録音、つまり音響さん(PA)と音声さん(AUD)の仕事が「似て非なる」ものであることを認識することである。
|
2006年12月29日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
2006年12月10日(日)
「音声技師 ENG」というキーワードだ。このキーワードでグーグルにトップで挙がっていた。
写真は昨日のJ1・J2入れ替え戦で見事J1に昇格した「ヴィッセル神戸のファン感謝デー」の取材をカメアシが撮ってくれたものだ。現場が重なってしまったので、笹邊が音声技師を担当した。普段はキャメラマン、テクニカルディレクターだが、これでも日本音響家協会の正会員である。私が被っている黒い帽子はヘッドフォンが滑りにくく、またキャメラマンの時には髪の毛が邪魔にならないようにと、誕生日にあわせて娘が編んでくれたものだ。確かに効果的で暖かい。ヘッドフォンは愛用のスタジオモニターMDR-7506だ。
昨日の結果が反映して大勢のサポーターが訪れた。今回の取材ではクリアーな音声は当然だが、サポーター達の歓声、リアクションが重要になる。
メインステージでのイベントはPAスピーカーからの音声と客席の歓声を1本のマイクでバランスよく収録しなければならない。MCや選手の動作を見ながらガンマイクの方向を調整する。いつもはゼンハイザーのMKH-416だが、今日は機材不足のためβカムに使用しているAKGのガンマイクをクレードルサスペンションで竿に付けて使用している。
三浦選手の囲み取材ではすかさず正面に構えたMキャメラマンのキャメラ前に屈んで下からガンマイクを向けて生声を録る。今日の仕事はJ's GOALで配信される。また12/8に同じくヴィッセル神戸を取材した練習風景や三浦淳宏選手のコメント、松田浩監督のコメントが配信されている。
明日はJ20a×8にテレサイドコンバーターを付けての望遠撮影がある。冷え込みが厳しいのでビンテンが滑らかに動くように十分にオイルを廻しておく必要がある。
|
2006年12月10日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
2006年11月07日(火)
「平衡バランス 言葉」である。何か可笑しい。
平衡を英語にすればバランスだ。我々が良く使う言葉に「バランス接続」と「アンバランス接続」がある。音声伝達に使用するキャノン端子や110端子は平衡(バランス)であり、RCA(PIN)は不平衡(アンバランス)になる。屋外アンテナで受信したテレビ放送の高周波を屋内に引き込む同軸ケーブルも不平衡である。
平衡バランスなどという言葉が何時ごろから使われだしたのだろうか。よく似た使われ方に「全自動オート」というものがある。「全自動オート」を検索すると約約1,630,000件ヒットする。全自動洗濯機ならいいが、全自動オート洗濯機は具合が悪い。それどころか「フルオート全自動」という言葉まであるようだ。フルオートで十分だしそれが正しい表現である。
同様のことを以前にも書いたが、カタカナの言葉を安易に使うのは考え物である。今日、明日は和歌山のアミューズメントのオープニング中継だ。仕事内容は「2台のEFPキャメラのライブ映像中継」であり「ビデオ映像の中継」ではない。「生ライブ」や「ビデオ映像」などという言葉は少なくとも映像制作会社は使うことを避けるべきだ。
|
2006年11月7日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
2006年09月20日(水)
「ENGミキサー 定番」である。ENG用のミキサーは色々なメーカーから発売されているが、使い良さ、信頼性ではシグマだろう。
上位機種のSS-342や低価格のKS-T2000が発売され、SS-302は生産完了となっていたが、やはり定番ミキサーだけあって、再び生産を再開している。またSS-342はKS-342としてコストダウンした新機種に変わった。しかしENGでは今なおSS-302が人気だ。342に比べるとメーターが一個しかなく、基本はモノラルの302だが、使い勝手は302が上だ。放送用キャメラと同様、音声ミキサーも必要以上な機能が盛り込まれるよりも、使い勝手がよく、安定していることが基本である。
|
2006年9月20日
| 記事へ |
コメント(2) |
| 音声・録音・音響 |
2006年08月20日(日)
「録音 客席用 コンデンサーマイク」である。ライブ収録では非常に重要なことだ。また、ライブに限らず、クラシックにおいてもホールトーンが重要になる。
映像の無い録音のみの場合はクリアーさが重要で、オンマイクの音を中心に構成するが、映像が加わるライブ映像ではクリアーさ以上に臨場感を重要視しなければならない。つまり「見えているのみ聞こえない」は許されない。
今日は久しぶりの休日を自宅で過ごしたが、J:COMのコミニティー放送で和歌山から「生中継・おどるんや〜第3回紀州よさこい祭り〜」と題して6時間半の生中継番組を放送していた。日本音響家協会会員として一言申し上げるなら「音に対するポリシーを感じられない」ということになる。激しく踊る人々の息づかいどころか、踊り手の鳴子の音など全く聞こえてこない。また観客の声援や拍手も聞こえないため、客席のリアクションは絵空事になってしまう。たまにMCが登場する時にMCマイクに回り込む拍手が少し聞こえるくらいである。ライブ中継で「見えているのに聞こえないと」言う状態には聞くに堪えないというよりも、見ていて強い苛立ちを覚える。
おそらく今日の放送はPA用のラインのみを中継していたと思う。いま私たちを取り巻く映像メディアはハイビジョン等、日々高品位化し、音声も5.1chドルビーサラウンドなども一般化してきている。私は「音は映像を支える最大の要素である」と考える。音無くして映像は有り得ないのだ。ライブ収録(ライブに限らず全ての音を伴う映像)では音作りに対する明確な意思を打ち出す必要がある。
|
2006年8月20日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
2006年07月30日(日)
「300B シングル」である。Googleの下位からよく来ていただいたものだ。検索されていたページはこのブログのページだった。
300Bシングルとは直熱三極管による管球式オーディオパワーアンプのことだ。正しく言うならWE300Bシングルになる。最近中国、ロシア、スロバキアから300Bが輸入されているが、やはりWE(Western Electric)300Bにこだわらなければオールドファンとはいえないだろう。しかし残念ながら40年ほど昔に作ったWE300Bシングルや2A3シングルはすでに手元にはない。
本物に拘ったWE300Bシングルを入手するなら東京の新藤ラボラトリーあたりだろうか。僅か8WのA級動作のアンプだが、2A3シングルの2Wとは比較にならない。ALTEC A7等の高能率バックロードホーンと組み合わせれば家が揺れそうな音圧を出し、フルオーケストラも軽々と再現できる。ただしそんな大きな音では近所から苦情の嵐間違い無しだ。
新藤ラボラトリーの美しいWE300Bシングルだが、やはり価格はそれなりである。当然技術に生きる私としては自作しかあるまい。そう思いつつ何年も過ぎてしまった。頭の中のには40年前の回路図がそのまま残っている。ST管に拘らないのでドライブはECC83(12AX7)で十分だ。ただしメーカーはテレフンケンが良いだろう。しかし今となってはこのMT管の入手も困難になってきた。回路は初段がECC83によるSRPP(Shunt Regulated Push-Pull)でいきなり最終段のWE300Bを駆動する。当然だがNFBは必要ない。
ただし何時になったら実現するかはわからない。それよりも前にコンデンサーがパンクして壊れているラックスの古いプリメインアンプSQ-77を修復しなければならない。
そして夢は何時の日か6336Aパラレルプッシュプルによる出力トランスレスのパワーアンプを組むことである。
直熱三極管とはカソードをヒーターで加熱するのではなく、ヒーターそのものがカソードになっている三極真空管のこと。
|
2006年7月30日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
2006年07月27日(木)
「ファントム電源とは」という検索が5件もあった。検索のIPアドレスが別なことからそれぞれ別な人からだと考える。以前にも書いたが改めて説明しよう。
下の図のようにオーディオミキサーの入力トランス中点に+48Vを加え、GROUND=シールド側を接地とした電源供給だ。そのために入力端子のHOT-COLD間には電圧は発生しない。これがファントム=幽霊、つまり電圧が見えない電源供給の由来である。ファントム電源がもしリップルを含んでいてもマイク端子のHOT-COLD間には電位差としては現れないためハムを生じることも無い。また、間違えてダイナミックマイクを接続した場合もマイクを破損することは無い。最近ではトランスを用いない電子バランス回路が採用され、ダイオードを使った供給方式も多くなったが基本的には同じ考え方である。
次にマイク側だが、凡その回路は下の図のようになっている。コンデンサーマイクには48Vもの高電圧は必要ないが、高電圧にすることで電流を少なくしている。つまりP(電力)=I(電流)×E(電圧)というオームの法則から解るように電圧を高くすることで流れる電流を少なくして同じ電力を供給できるのだ。
電圧と電流の話をしたついでにもう少し説明すると、我々の生活に供給される電気だが、もし発電所から100Vで送ったとしたら送電線に大電流が流れ、直径何十メートルもの送電線が必要になる。高い電圧=高エネルギーによって小電流で大電力を供給しているのである。
|
2006年7月27日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
2006年07月24日(月)
タンノイ GRFという検索だ。最近オーディオ関連でこのブログがよくヒットしている。特にタンノイ関係でのアクセスが7月には数十件もあった。今日は古いオーディオファンとして少しばかり薀蓄を語ってもよいだろう。
タンノイというとやはりアナログオーディオだ。そしてアナログオーディオといえば当然レコード盤になる。日本では殆ど見かけなくなったレコードプレーヤーだが、海外ではまだまだ現役のようだ。日本ではベルトドライブ型レコードプレーヤーを使い続けたくても、ベルト、軸受け、カートリッジなど入手が困難になってきたが、海の向こうではリペアパーツも販売されている。オランダ家具を例にしても明らかなように、物を大事にする習慣は日本人よりも西洋人の方が優れていると思う。日本人はどうしても新しいモノに目移りが激しい。しかし優秀なものは時代を超えて優秀であり続ける。
最初の写真は私が使っているレコードプレーヤーのトーンアーム。英国のSME-9009/SUだ。このシリーズUは兄から譲り受けたものだが、今もナイフエッジは極めて高感度である。ターンテーブルはテクニクス(松下)のダイレクトドライブSL-120だが、後継機のSL-1200はDJ達の需要のおかげで今もMK5として現行機種である。
上の写真は今から30年余り前に購入した3009/SVで、チタンアームとオイルダンプに特徴がある。それまでの3009とは全く違ったデザインだがナイフエッジやラテラルバランス、インサイドフォースキャンセラーなどは同様のスタイルを継承している。このシリーズVはパイオニアのベルトドライブプレーヤーPL-41Aの筐体に取り付けている。↓
40年程前に購入したPL-41Aにはオリジナルのトーンアームが付いていたが、ダイキャストボディーを加工し3009に換装して使用していた。その後モーターの回転数が1/2になったPL-41Dという8極モーターを搭載したモデルが発売され、モーター、プーリー、進相コンデンサー、軸受けを交換してPL-41Dと同等に改造し、トーンアームも3009/SVに交換した。またその時、FR(フィディリティーリサーチ)のトロイダルコアトランスを用いたFRT-3型MCカートリッジ昇圧トランスも内臓した。このトランスは機械生産できず、手作りによるものだそうだ。
当時ターンテーブルとしてMU-41が発売されていたが「ターンテーブルとトーンアームは分離せず、剛体でひとつに結ばれているべきである」という考えからダイキャストに穴を空けてトーンアームを直付けしたのだ。さらにオリジナルの木製箱に漆黒のピアノ塗装を施した。
この古いターンテーブルのリペアパーツは今も入手可能で、拙宅では当時の性能を維持しつつ元気に回っている。私にとってはトーレンスやガラードの名機以上の名機として愛着は深い。
デジタル時代になった今日、日本人の美徳であった「物を大切にする」という心を海外から学ぶのも良いのではないだろうか。
|
2006年7月24日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
2006年06月14日(水)
タンノイSTRATFORDという検索が10件以上あった。検索元はヤフーとグーグルだ。どうやらオークションに出品されていて、その詳細を求めて検索していたようだ。検索結果をみると確かにSTRATFORDが出品されていて思わず欲しくなってしまった。しかし残念ながらゲストでは入札できず、諦めるしかない。危険という訳ではなく、オークションの「写真だけを頼りに、顔の見えない相手と取引する」というシステムに抵抗がある。
STRATFORDはタンノイの代理店がTEACに替わってから出たモデルで、当時定価は128,000円で実売1本=90,000円ほどだったように思う。このあたりの記憶はあいまいだが、今も現役でスタジオモニターとして使っている。それまで使っていた日立のHS-500のウーハーが飛んでしまったため、私が使っていたSTRATFORDを急遽会社に供与してそのままである。ウーハーの死んだHS-500は今も修理できないで眠っている(中古のHS-500用ウーハーがあればすぐに現役復帰できるのだが・・・)一応オークションをやっている音響さんには「出たら落札してほしい」と頼んでいるのだが、なかなか見つからないようだ。
私がタンノイと出会ったのは30年以上前のことだ。当時趣味で真空管アンプを設計していて、上杉佳郎氏の回路などを参考にKT-88ULや2A3PP、2A3シングル、300Bシングルなどを作って楽しんでいた。出力トランスはこのブログでも何度か登場している田村製作所のものとタンゴ、山水などである。当時「タンノイには真空管アンプが良い」と言われ、ラックスのCL-35で自作パワーアンプを駆動してオール管球式のシステムを構成していた。
その時のスピーカーはタンノイVLZというモデルで、同軸2ウエイのものだ。モニターゴールドと呼ばれスピーカー中央部のコアに複数の孔があり、それがユニットの背面にまで貫通している。そこにアルミダイヤフラムのツィーターが付けられている。それは一種のホーンツィーターをといえるユニークなものだった。VLZよりも大きいGRFやオートグラフなども同じ同軸構造になっていて、大きなシステムであっても抜群の定位感を出していた。
タンノイが優れていたのはスピーカー単体のみではなく、箱(エンクロージャー)が優れていることだった。材料や形態が吟味され「タンノイのユニットはタンノイの器に入ってこそタンノイ」と言われていた。国産エンクロージャーにVLZを入れてもそれはタンノイではなかった。そして英国人の音楽性がスピーカーシステムとして表現されていたのだ。
このブリティッシュサウンドを支えているのがSMEのトーンアームだ(と、私は思っている)。3009UからタイプVを使い、その後チタンアームのタイプWまで使った。タイプVとタイプWは今も私の書斎で現役で活躍している。日本製が悪いというわけではなく、物理的な特性は日本が世界一である。ただしそれを製造する人々の環境が違った。いたるところで音楽会が開かれ、子供のときから生演奏に触れてきた生活習慣である。戦時中、日本人が学徒動員され、婦人たちが竹槍を持っていた頃にも、英国では音楽会を楽しんでいたそうだ。(日本と同盟国だった独逸でも同じように戦火の中、音楽会が開かれていた)勝てるはずはない。
ただし、最近の日本ではONKYOが聴感最優先で様々な努力をし、音楽性豊かな製品を世に送り出している。日本のオーディオ製品も世界に通用する音楽性を備えてきたようだ。今後の進捗状況が楽しみである。
色々書いたが、最近はゆっくりレコードを聴く暇がなくなってしまった。レコードの溝にゆっくりと針を落としてゆったりと音楽を楽しみたいものだ。一歩下がって様々なことが考えられるだろう。
|
2006年6月14日
| 記事へ |
コメント(0) |
| 音声・録音・音響 |
|